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第2話

中庭をぐるっと取り囲むように作られた石の回廊。 城に戻ったラントアがスーラの腰を抱き、自分のモノであることを見せびらかすようにして身体を密着させて歩く。 呆れ顔をしながらその横を歩いていたガルーが、まるで犬のように鼻をクンクンとさせ始めた。 「何をやっているんだ、ガルー?」 ラントアが自室の扉を開けながらガルーに問いかけた。 先にスーラを中に入れてそのまま閉めようとするのを、ガルーが一瞬早くその体を滑り込ませる。 「チッ!」 ラントアが隠す事なく明らかに嫌な顔をして扉を閉めた。 「今夜の成人の儀で出される料理のいい匂いを嗅いでたのに…人を閉め出して何をするつもりだったんだよ?」 「それこそ聞くまでもなく、ナニに決まっているだろう?なぁ、スーラ?」 二人のやりとりを柔らかく座り心地のいいソファに座って聞いていたスーラが、首を傾げる。 「僕にはちょっと分からないな…」 ラントアの顔が歪む。 にこにこと笑顔で見つめるスーラの座るソファの横にどかっと座ると、その手を握り口元に近付けた。 「成人の儀を迎えれば、子孫残しの為の相手を人ではないモノ、彼の国の者達の中から選ぶのが約定。私はお前を、スーラを選ぶと決めている。この事は王達にも既に報告済み。今宵、お前は身も心も私のモノとなるんだ。」 そう言って、その手に口付けた。 「だから、それは無理だって何回も言っているだろう?」 手を触手に変えてスルリとラントアの手から抜け出すとそれは再び人のそれに戻っていた。 あーあとガルーが天を仰ぎ見る。 ここ数日、二人が顔を合わせる度にこの事で言い合ってきたのをずっと見ていたガルーが、ため息をつきながら二人の座るソファーからテーブルを挟んだ向かい側に置いてある同じソファにゴロンと横になった。 同じように続いている二人の言い合い…主にラントアが声を荒げ、それを宥めるようにスーラが相手をする。 別にスーラもラントアを嫌いじゃないんだろうし、頷いちまえばいいのになぁ。 二人の方に寝返りを打ち、そっと片目を開ける。 「王の子を、この国を継ぐ者を産むのがスライムじゃ、皆が納得しないよ。」 結局はそれだよな。 ピラミッドの頂点にいる王子であるラントアとその最下層に位置付けられているスライムであるスーラ…大体、ラントアのネーミングセンスのなさもなぁ。スライムだからスーラってさぁ、もう少し考えろよって話だよなぁ…。 そんな事を考えながら寝心地の良いソファに身を委ね、それが誘う眠りを受け入れるようにガルーは開いていた目を閉じた。

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