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第6話

招かれた部屋はいくつかの仄かな蝋燭の燈だけが揺れる闇の中。しばらくは動けずに立ち止まっていたが、ようやくそれに目が慣れてくると段々と周囲の状況が見えて来た。 大広間ほどのかなり広い部屋の中、真ん中に儀式に使うのだろうと容易に推測できる台が置かれ、その周囲に椅子やテーブルが倒れたり逆さになったままで放置されている。その周りに数個の扉が見える…と、それらの内のいくつかが開いて、中から先程の男と同じように黒いフードを頭からすっぽりと被った男達がその一つ一つから出て来た。 「お相手をあちらに…。」 先程の男がラントアに向かって台を指さす。 無言で頷き、恐怖に引き攣った顔のスーラを抱いたラントアが台に近付いて、 スーラを横たえようとするが、スーラはその腕をラントアの首に巻き付け離そうとしない。 「スーラ!離すんだ!!」 背後からガルーが来て、首に巻きついたスーラの手を剥がそうとする。 しかし、必死に掴むその手はぴくとも動かない。 「さすがに強いな…。」 ふうとため息をついてラントアに話しかけたガルーが一瞬で呆れ顔になる。 「スーラに抱きつかれて、嬉しそうだな…ラントア様?」 「当たり前だ。頼られるのも、このように身体を密着させるのも私の喜び。」 「じゃあ、さっさとその台に移せ。そうすれば、子孫残しの為の儀が行えるぞ!」 その言葉にラントアの体が動いた。首を振って嫌がるスーラを抱きつかせたままで台に置くと、その腕にフードの男が手早く針を刺した。 注射器の中身全てが体内に入る頃には、スーラの体から力が抜け、あれだけ強く掴んでいたラントアの首に回していた手もズルズルと滑り落ちた。 「…トア、ラン…トア…イヤだ…助け…」 最後の言葉は寝息となって消えた。

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