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第9話

「ったく、何で俺ばかりがこんな風にされるんだ!?納得いかねー!」 鞭をケースにしまっているラントアに向かって、赤くなった手の甲にふーふーと息を吹きかけながら食ってかかる。 「ラントア様、そろそろ中に…」 銀髪の青年がローブを被った姿に戻り、ラントアの為に扉を開けた。 「おい!俺を無視するな!!」 「騒がしいやつだな…お前はそこで喚いていろ!」 ラントアが呆れたような顔でガルーに言うと、扉の中へと消えて行った。 ガルーがそれでもラントアに続いて入ろうとするのを、さっと扉の真ん中に男が立ち塞がると、一礼して扉を閉めた。 「おい!!開けろよ!!おい!!」 ドンドンと扉を叩く音に、ラントアがため息をつく。 「あいつの事はあなたに任せる。俺はスーラの事をしなくてはならないからな…あまりいじめないでくれると後がうるさくなくて助かるのだが…」 「それではほどほどにお相手させていただきます。あと少しでスーラ様も覚醒されるかと…お戻りになられますか?」 「そうだな、このまま連れ帰る。あと…ガルーに成人の儀の分の体力は残しておくようにと伝えておいてくれ。」 男はふふっと笑うと、分かりましたとラントアに一礼して、扉が壊れそうなほどに叩く音の主の元へと向かって行った。 それを見送ったラントアが部屋の真ん中に歩を進める。 すでに先ほどまでいた数人のローブの男達は誰もいず、ラントアが後ろ髪引かれるように離れた台に、スーラが白い布をかけられ寝かされていた。 そっと、白い布を捲る。 特に何も変化はないように見えてほっとため息をついて布を戻した。 「スーラ、これでようやくお前を子孫残しの相手として正式に皆に披露できる…ようやく。」 「うぅっ…」 唸るような声にラントアがスーラの肩を揺すった。 「スーラ、大丈夫か?」 うっすらと瞼を開けて、ラントアをきっと睨む。 「大丈夫?あいつらが僕に何をしたか分かって言ってる?人の…いや、人間ではないからって無茶しすぎ!お腹の中がごちゃごちゃで気持ちが悪い…」 された事を思い出した為か、スーラの顔が青ざめる。 「いつまでこんな気持ち悪いのが続くの?もう嫌だ…」 ラントアから背を向けるようにしてスーラが寝返りを打つ。 それをラントアがこの部屋に来た時と同様に軽々と抱き上げると、スタスタと扉に向かって歩き出した。 扉は開いたままで、廊下にいるであろうガルーと男の声が聞こえる。 ラントアが外に出て来ると、それでもすぐさまガルーが気が付く。 近寄ってこようとするのを、ラントアが首を振って制した。 「お前はその方に遊んでもらっていろ!」 そう言うと自室に向かうべく、薄暗い地下室から明るい昼の陽射しの元へと続く階段を上がって行った。

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