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第21話
ギシッ
ベッドが軋み、身体が沈む。
ラントアか…。
いつの間にか横にあった温もりがなくなったことに気がついてはいたが、それよりも身体は眠りを欲しがり、頭は思考を止めた。
どの程度の時間が経ったのかわからないが、気配を感じて意識が戻った。
戻ってきたのか…
微睡んでいる瞼を開ける事なく、寝ている風を装って寝返りを打つ。
背中を向けたまま、少しベッドの端の方に体を動かし、無言で拒否を示した。
どうせ、無駄なんだろうけれど…
時間稼ぎにもならぬこんな子供じみた事をやっても、結局はこれからまたラントアと体を重ね、その肉体を受け入れ続けることに変わりはない。しかし、仇だ、受け入れぬと言っても身体はそれを考えるだけで心を裏切るように奥深くからじわーっと潤い火照ってくる。
「仇だ…皆の仇…忘れるな…お前を見ている…皆の恨み…忘れるな…ラントアは…人間は仇!」
耳元で冷たい囁きが聞こえ、それまでの熱く火照った体が一気に芯まで冷え、顔が青ざめる。
目を見開き、上半身を起こすがそこにはスーラ一人がいるだけ。
「な…に…?」
カタカタと震え出した身体を両腕で抱き締める。
ラントアは全員を、彼の国の者達は全て、たった一人の例外であるスーラを除いて全員を滅したと告げた。
だが、この城には、いや、この国にはまだ最低でもあと一人は彼の国の者が残っていたということだろうか?
しかもその者はかなりの術なりを使い、今さっきして見せたように自分を監視している。
生き残っていた仲間がいると喜ぶ気持ちを、恐怖が押しのけた。
ラントアに言って…
そこまで考えて、驚愕する。
僕は裏切り者になるつもりか?!
体から力が抜け、起き上がっていた上半身がベッドに倒れ込んだ。
顔を受け止めた枕に涙が吸われていく。
ぎしっ。
ベッドが軋んで、体が沈んだ。
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