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第28話

「ラント…アっぁぁあああああ!」 首にしがみついて、先程までとは違う甘く切ない声をスーラが出す。 こんなにもうまくいくものなのか… 仇という事を忘れ去っただけで、スーラは体も心もラントアに曝け出し、ラントアのその全てを受け入れていた。それが事実にすでにその腰には子が出来た証が浮かび上がっていた。 それをなぞるとスーラの腰がビクンと跳ねた。 「はぁああん!」 「分かるか?ここに証が出てる…スーラ…俺との子だ…俺とお前の子が出来たんだ!」 「え?!」 「お前の腰の…ほらここに…」 ラントアの指が触れた先をスーラの視線が追った。 「あ、あ…だ…め…、だめ!いやだ!やだ!!いやあああああああ!!!」 突如、頭を抱え泣き喚くスーラに、ラントアが驚愕し、それでも狂ったように取り乱すスーラを力強く抱きしめた。 「スーラ、しっかりしろ!!」 「なん…で…?何で子が…?ラントアの心を受け入れた?僕が?僕は仲間を裏切っ…た…」 かくんと体から力が抜け、スーラの意識が閉じた。 「おい!スーラ!!」 サンクリウスからスーラのラントア達が仇という話に関連する全てを消し去ったと聞かされていたラントアがハッとした顔で青ざめる。 「まさ…か…」 ラントアがガルーの部屋に通じるベルの紐を勢いよく引っ張った。 これはもしもの時のためにとガルーがラントアが拒否したのを無理やりつけていった物。 まさか使う日が来るとは…。 紐から手を離すとガウンを羽織り、スーラの体には布をかけた。 暫くすると、バタバタと大きな足音が扉の向こうから聞こえて来た。 ラントアはおもむろにその手に剣を持つと、扉の前に対峙した。

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