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第35話

地下室へと続く階段。 一人、足音静かに下りて行く。 廊下を灯す心もとない蝋燭の明かり。 それでもその歩みは止まらない。 廊下の奥、魔術師達の集う部屋の大きな扉の前に着くとノブを回した。 しかしそれはどんなに力を入れてもびくともしない。 「くそっ!」 「あなたでは開けられませんよ、ガルー。」 サンクリウスが暗闇から姿をあらわした。 「大分疲れさせたはずなんだがな…」 「私には彼の国の血が流れていますから…あなた方とは違うのですよ。」 それでと言いながらサンクリウスがガルーに近付く。 「甘い言葉と約定まで使って、あなたは何をされにここへ来られたのですか?」 「スーラをな…」 「何故、ここだと?」 「あいつにはラントアとの約定がある。それ故、この国からは出られない。だが、人を一人隠すにはこの国は小さすぎる。だが、ここなら誰も入って来られない。隠すにはいい場所だ。」 「ガルーですらそう思う場所に、私が隠すと?」 「まあ、言われてみればそうだな。」 「言い訳はされますか?」 「したところで、お前にそれは通じるのか?」 サンクリウスがふふと笑う。 「通じませんね…でも、今回だけは。」 「見逃すということか?」 「存外、あなたを気に入っているようなのですよ、私が。」 「俺をか?それとも俺のモノをか?」 ガルーがニヤッと笑う。 それを受けたサンクリウスがガルーを潤んだ瞳で見つめる。 「両方ですよ…ふふ、そんなことを言うから身体が…ねえ、ガルー?」 「承知。それでは、お姫様をベッドまでお運びいたしましょうか?」 「ベッド、まで?」 「不満ですか?」 「…意地が悪い。」 「それなら…あなたの望むままに、あなたの中まで…いかがですか?」 そう言って、サンクリウスの前で片膝をつき手の甲にキスをする。 「私の中まで…ふふふ、ガルー、許します。」 「それでは…失礼。」 すっと立ち上がって一礼すると、サンクリウスを両腕に抱えて、部屋へと戻って行った。

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