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第36話

「ガルー…?」 「ようやく起きたか?もう昼だぞ。」 「何?昼?…っスーラ!!」 起きあがろうとするラントアをガルーの腕が邪魔をする。 腰を掴まれ、ベッドに引き戻された上、ガルーに跨られたラントアが、ガルーに向かって拳を飛ばした。 「おっと!寝起きから元気だな!」 それを難なく掴むとベッドに押し付ける。 「くぅっ!」 ベッドが音を立てるほどに力を入れられたラントアが痛みで顔を歪めた。 「いいか?スーラは今のところ見つかっていない。お前から離れ、最悪この国からも離れたという事なら…もう。」 「言うなっ!!」 「この約定の全てを知っているのは、今や現王とラントア、そして俺だけだ。サンクリウスは何も知らないからな。多分、今頃…。」 「だからっ!だから一刻も早く探さないと…一刻も早…く…ガルー、何を…した…?」 「少し疲れてるみたいだからな…起きる前にちょっとした神経緩和剤を飲ませた。副作用は…眠る。おやすみ、ラントア。」 「っガ…ー…」 「名前くらい最後に呼ばれたかったな…ラントア。」 ガルーがラントアに口付ける。 「まだ未練が?」 サンクリウスの冷たい声が背後から聞こえた。 「最後の別れくらい、させろよ。」 「本当にあなたがラントアと別れられるのか…」 ガルーがベッドから下りて、サンクリウスの前に立つ。 「お前と約定を交わし証も移した。そして、お前との子孫残しまで約束した俺を疑うのか?」 「それでも、心は…」 「欲深いな、俺のお姫様は…だが、それもお前のものだ。この身も心も全てをお前にやると言った。証がそれを証明したはずだが?」 「このまま殺してしまいたい…ガルー。」 「おいおい、物騒なことを言うなよ?」 「だって、きっと私はずっとそれを疑って生きて行く。どんなに証が出ても、どんなに愛されても…例え子が出来ても…私の心にはラントアとガルー…あなた達二人が…」 「その疑心は理解できるし、それをどうにかできる術を俺は持っていない。お前が殺すことで、俺を自分のものにできると考えているなら…殺れよ。」 「ガルー!?」 「俺はお前に殺されても構わないよ。サンクリウスがそれで気が済むなら、この命もお前にやるよ。」 「もう言わないでっ!分かったから、だからもう!」 「泣くなよ。ほら、さっさと行こう。この国への未練が出ちまう。 流石にそれくらいは許せよ?」 「そんなに嫉妬深くありません!」 ぷっと頬を膨らましてサンクリウスが横を向いた。 ガルーがははっと笑いながらその腰に手を回し、二人は部屋から出て行った。 扉の閉まり切る一瞬、ラントアを見つめるガルーの瞳に涙が浮かんだ。

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