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第37話
「それで?」
城から出て、森の入り口近くでガルーがサンクリウスに尋ねる。
「それで…とは?」
「俺をどこへ連れて行く?」
「どこが良いでしょうねぇ?」
ふっとガルーが笑う。
「まだ、俺は不合格か?」
「あなたは死ぬまでずっと不合格のままですよ、ガルー」
「少しは信用しろよ。」
はぁとため息をついて、頭を掻く。
「なら、死んで下さい。」
「おまえ…」
「…その心を…殺させてくれますか?」
言うが早いか、サンクリウスが術を唱え始めた。
「ったく…いいぜ、殺せよ。それでおまえの気が済むなら、俺の心なんかくれてやるよ。」
サンクリウスの口が止まる。
「ガルーはズルい…本当は、本当はガルーを信じたい!でもっ…!」
「分かってる。おまえの立場なら、俺もそうだと思う…気にするな。」
片手でサンクリウスの頭を抱える。
「ガルー…。」
「サンクリ…ウス…」
バサっとガルーの体が地面に横たわった。
その胸に綺麗に丸い穴が空いている。しかし、流れ出るはずの血は一滴も見当たらない。
「辛抱して下さい…」
サンクリウスは苦悶の表情のガルーにそう言うと、言葉とも言えない音をまるで歌っているかのようにリズムよく唱える。
両手で持ったガルーの心臓が黒く固まっていくが、その鼓動は止まることなく脈打ち続けているのが見てとれた。
サンクリウスが術を唱え終わると、それはまるで石のようになっていた。それを満足そうに眺めてから、倒れたままのガルーの開いた胸にそっと入れると、骨、神経、血管が再び繋がり、筋肉や皮膚で覆われていく。
胸には傷一つなく、何も変わっていないようだった。
ただ一つ、体を起こし、静かに瞼を開けたガルーの瞳に光はなかった。
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