40 / 46
第40話
体が震える。いつもは感じない冷気を感じてラントアが目を覚ます。
「窓…開いていたのか…まさか!?」
カーテンを開き月夜に照らされた庭を見る。
幻影だと思っていたサンクリウスはやはりいつものようにそこにいる事はなく、これまでの自分の身に起きたことが真実だと再認識する。
「俺の為…か。スーラを隠した事は分かる。側に仇を置いておくと言う事だし、命を狙われているわけだしな。だがガルーは?あれは俺が唯一信用し側におき、この命を預けた。なぜそれを隠したんだ?」
ベッドに座り、じっと考え込む。
「まさか?!」
頭に浮かんだのは約定。
子孫残しの真実を知る者。
ガルーの父親はすでに病気によって亡くなっている。
子孫残しの約定の原文を知る者はこの国にたった一握り。
その一人がガルー。
それ以外の者は放っておいてもラントアが王位につく頃にはこの世にはいないだろう者達。
「俺が正当な王位継承者ではない事を知っている上に、俺と同じ時間を過ごす者…それがガルー。そう言う事なのか?!」
しかし、それならば合点がいく。だがガルーにはそれ以上の利用価値、そして信頼関係がある。
約定の為にこの身体も差し出し、証も刻んだ。約定の事はサンクリウスの方が詳しいはずなのに…。
ラントアの眉間に皺が寄る。
また皺がよってる。ガルー、見てよ!ラントアはすぐに考えすぎちゃうんだね。
ああ、そうだな。少しは俺達を頼れよ!
ラントア、ほらシワ伸ばせ!
ガルーの手が眉間に伸びる。
それを触れる直前で叩き落とす。
うるさい!騒がしくするならお前達とは絶交だ!
まーた出たよ、ラントアの絶交。ガルー、今回で何回目?
さあな?今月だけなら、毎日一回は言ってたからな…今日って何日だ?
うるさい!やっぱりお前達とは絶交だ!
2回も絶交されちゃったよ!
だが、俺達はお前の側を離れないよ、ラントア。
うん。ラントアの絶交は大好きって意味だもんね。
二人してくっつくな!
両側から俺を抱きしめる二人と顔を見合わせて大笑いしたな…それが何でこんな事に。
あの頃にはもう戻れないのか?
じっと部屋の奥の暗闇を見つめる。しかし、その瞳は何も見てはいなかった。
そして暗闇よりも深い闇がラントアの意識を再び奪った。
ともだちにシェアしよう!