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第42話

ラントア… ラントア!! もう聞くことがないと思っていた声が覚醒しきっていない脳に直接響く。 「ガ…ルー?」 まさか?! 目を瞑ったままで語りかける。 「どうやって?」 しかし、ガルーはラントアの質問に答える事なく、焦ったように早口で一気に囁く。 時間がないんだ。 スーラはサンクリウスの部屋だ…すまない…ラントア… それだけだった。 たった一瞬の出来事に、ラントアは今聞いたガルーの声が現実だったのかそれとも夢だったのか計りかねていた。 目を開き、じっと天井を見つめる。 「でも…」 いなくて当たり前…もしもいれば、スーラを助けられる! がばっと一気に起き上がると、剣を手にガウンを羽織って部屋の外に出た。 さーっと吹く風が、寝起きの身体にはまだ少し冷たい。 ブルっと身震いをすると、一度深呼吸をして一歩踏み出した。 誰か一緒に…いや、騒ぎになればサンクリウスにバレてしまうかもしれない。 一瞬出しかけた声を飲み込むと、足早に地下に降りて行った。 ちょうどその頃、洞窟の中ではサンクリウスが瞼を開けた。 隣には天を見上げたままのガルーが横たわる。 「あなたって人は…さすがにこの国の騎士団長、という事でしょうか?」 返事のない唇を指でなぞり、その上から自分の唇を合わせる。 「私だってこんな冷酷なことはしたくはないんですよ。それでも、私の可愛い弟を守るため。あなたとスーラにラントアのそばにいてもらうわけにはいかないんです。許して下さい…それでももう少しだけ…ガルー、一緒に…。」 ガルーに跨り、その体を合わせ抱きしめる。 ガルーの瞼がゆっくりと瞬きをした。

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