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第43話

 そーっとガルーの腕がサンクリウスの背中に回ると、ぐっとその体を力任せに抱きしめた。 ボキボキッと骨の折れる音が洞窟内に響き渡る。 「ガルー?何をされているんですか?」 聞こえるはずのない声にガルーの腕から力が抜ける。 「ぐはっ!」 潰される直前にサンクリウスの肉体から抜け出た影がガルーの体を自分の体の上から勢いよく踏みつけた。 痛みに声が出るガルーを見てサンクリウスが舌なめずりしながら恍惚とした表情で笑った。 「まったく、少しは雰囲気を大事にして頂きたかったですね。もう少し余韻を楽しみたかったのですが、あなたは早死にをお望みのよう…いいでしょう。その願い聞き届けて差し上げますよ、あなたの最後の願いですからね。」 「か…ってな…事を…」 「話せる事もできるんですか?!やはりあなたを殺すのは惜しいですね…だが、それだけの力のあるあなただからこそ、生かしておくわけにはいかない…ラントアのそばにいてもらっては困るのです。ガルー、お別れです。」 「ふ…ざけ…る…なっ!」 ガルーの体から気迫が溢れ出し、サンクリウスが飛び退いた。 「なにっ?」 サンクリウスの肉体がガルーの上から落ち、コロコロと床に転がる。 ぐいっと床についた腕を伸ばして上半身を起こすと、サンクリウスの影に手を伸ばした。 瞬間サンクリウスが手を振り、ガルーの身体がパンっと音を鳴らして洞窟内から消えた。 はあとため息をつくと振った手をじっと見つめる。 「あぁ、まずい事をした。地下の部屋に戻らなければ…しかし肉体の治癒に時間が…だがこのままではガルーの制御はできないか…仕方ない…」 そう言うと影は肉体に手を翳し出した。

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