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第45話
重苦しい空気の中、口をつぐんだままで二人、ラントアの部屋に向かって歩く。
スーラがふと顔を上げると、中庭を挟んだ向こうでは、これまでの色々がまるで嘘かのように、二人の為の祝宴が続いていた。
その様子をじっと見つめるスーラに、ラントアがその肩をしっかりと抱きしめたまま、先を促した。
二人が部屋に着き、ラントアが扉を開けて入ろうとするが、スーラは部屋の前から動こうとしない。
「どうした?やはり俺はお前にとっては仇か?」
スーラがそうじゃないと言うように首を振る。
「やっぱり僕、ガルーの所に戻る!」
そう言って、後ろを振り返ると今来た道を戻ろうとした。
しかしその腕をラントアが掴み、部屋の中に無理矢理引き入れる。
「ラントア」
その名を呼ぶ前にその本人の唇によって塞がれたスーラの口はそれを声に出す事は出来なかった。その代わり、先程の二人のように唾液の絡み合う音とスーラの口から漏れる甘い吐息が部屋の空気に湿度を与えていく。
「ん…んん…ふぅうん。あ…やぁああ…ん…」
汗ばんだ前髪をラントアがかきあげると、その眼差しが露わになり、スーラの心臓が高鳴った。
スーラの膝と腰はガクガクと震え、その気持ち良さに今にも身体が崩れ落ちそうになる。立っていることすら困難な状況に、スーラは腕をラントアの首に強く巻き付けた。
ラントアはニヤッと笑うとそれを外させ、かくんと崩れ落ちそうになるスーラの身体を抱き上げ、スーラのばたつかせる手足を無視して、ベッドまで運ぶとポンと放り投げた。
スーラがベッドから起き上がり何かを言う前に、ラントアが今度はスーラの足をグイッと引っ張って仰向けにさせると、それに馬乗りになり足の間にスーラの身体を入れて挟んで動けないようにしながら、自分の着ている物を全て脱ぎ捨ててスーラに覆い被さった。
「ラントア!今は…っ!」
スーラが懸命にラントアの胸に両手を置いて突っぱねる。
しかしその腕ごとへし折るようにラントアが強く抱きしめた。
「お前が連れ去られていた間、ずっと、ずっと我慢してたんだ!あの部屋で見つけた瞬間から、俺の我慢はずっと限界値超えてるんだ!ただ、お前の気持ちを無視するような事だけはしたくない。
もし俺を仇と思わず、俺とお前の子をその腹に宿した事にほんの少しでも喜びを感じてくれているなら…頼むから今ここで俺を受け入れてくれ!そしてもう金輪際俺から逃げないでくれ!スーラ!!」
悲痛な心の叫びのようなラントアの言葉にスーラの動きが止まる。
「この子と…」
しばらくしてお腹をさすりながらスーラが口を開いた。
「あの真っ暗な部屋で、この子と二人きりでいた時にね…」
「ああ。」
「産んであげられなくてごめんねって、本当にすごく辛くてね…だから、ラントアの声を聞いた瞬間、この子の顔を見ることができるかもって思ったら、すごく嬉しくて…だから…」
顔を赤くしてスーラが口籠る。
「いい、んだな?」
その言葉にびくんとスーラの体が揺れた。
「もう、お前の事を何があっても離さないし逃がさない…覚悟はいいか?」
ラントアの射るような眼差しに見つめられ、スーラは全身の血が沸騰するのではないかと思う位の熱を感じていた。
「熱いな…大丈夫か?」
ラントアの優しく自分を労わる声に、心臓が飛び出しそうになるほどに胸が高鳴る。
自分の仲間を滅ぼし、国を滅ぼした仇だとしても、スーラの心はラントアを愛し、その体はラントアを欲している。
もうどんなにラントアは仇だから嫌いだと思い込もうとしても、自分の真実の心に抗うことはできないと理解したスーラがラントアに囁いた。
「ラントア、僕のこの熱いの…ラントアので冷まして…お願い。」
スーラの言葉にラントアは無言で頷くと、スーラのまとっていた布を引き裂くようにして、その身体を貪った。
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