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第19話 猟犬様の戯れ⑤
後ろだけ、前も胸も触っちゃだめ。キスもだめ。
なんだったらキスが一番ダメだと、希望は懇願した。
ライは軽く笑ったが、「わかった」と頷いて、実際触れなかった。
だが、希望はすでに後悔していた。
「あっ! あぁっ! も、やっやだっ! だめっ……あっ! ぁあっ! あぅ……っ!」
唯一触れることを許してしまった双丘の奥は、ライの長くてごつごつとした指をすでに二本も飲み込んでいる。
その指に、ライはローションを少しずつかけていた。それがくぽくぽと指を出し入れする度に、奥へ奥へと流し込まれていく。
それが何を意味するのか、希望はもうすでにわかっていた。
「やっ! いやっ! あっ……もう、入んないってばぁっ……!」
「大丈夫大丈夫。力抜いてろ」
「ひっ、やっ! むりっ……あぁんっ!」
ライは希望の中に入れる指を増やす時にローションを手にする。最初は希望の体液だけだったが、いつの間にかそこはたっぷりと濡らされて、どんなに希望が拒否しても、締め付けてきつくても、増やされた指を飲み込んだ。
「ほら、入った」
「あっ……ぁあっ……うそ……なんで……っ」
思わず視線を向けたが、ライの指が根本までぐっぷりと飲み込まれている光景に眩暈がしそうだった。指を二本ねじ込まれた時に、もう無理だ、と思っていたのに、自分の指よりも太くて長い指を三本も飲み込んでいる。
目を見開いて凝視している希望の前で、ライはわざと淫らな音を立てるように指を動かし始めた。
誰にも触れられたことも見られたこともないような秘部を暴かれ、じゅぽじゅぽと激しく掻き乱される。
「あっああっ! あぁっ!」
腹の奥を押されて、声が漏れる。
最初は違和感故の悲鳴に近かったのに、今では自分でも恥ずかしくなるくらい艶めいて、媚びるような響きさえ感じられた。
指が一本の時はまだ平気だった。ライもまだ、奥まで入れず、手前のところをゆっくりと撫でていただけだった。
ぞわぞわと得体のしれないものが這い上がってくる感覚はあったが、耐えられる気がした。これを耐えれば終わるはずだという、根拠のない期待さえ抱いていた。
異変が起きたのは二本目の指が押し込まれたところからだ。ライがぐっと少し指を曲げて、そこに触れた途端、身体が勝手にびくんと震えた。最初はわからなかったけれど、何度か繰り返されて気づいた。気づいてしまったが、遅かった。
「あっ、あぁっ! あんっ……あ、ぁあっ!」
どうしていいかわからないまま、指はもう三本目。
指が動く度に声が漏れる。気づけば、くったりとしていた中心がぴくんっと震えて頭を上げ、とぷん、とはしたなく涙を流していた。
「あぁっ……アッ! ……んっ……!」
色んなところ触られて責められていた時は熱が昂ぶってすぐに溢れていたのに、今は昂ぶるだけ昂ぶって、ぐるぐると全身を巡って果てることができない。もう少しで、頭が真っ白になって弾けそうなのに、届かない。もどかしくて辛い状態がずっと続いていた。
――でも、言えないよぉっ……!
絶頂の連続に、「触らないで」と必死に懇願したのに、今度は「触って」と同じ口で言えるはずがなかった。
そそり立ちながら透明な涙を溢れさせるそこにも、胸のぷっくりと膨れて突起が硬くなったままのピンクにも、ライは触れなかった。しっとりと濡れた厚めの唇にも口付けはされていない。
けれど、耐えきれなかった涙がぽろぽろと希望の頬を流れ落ちる。
「もぉだめっだめっ……」
「いきたい?」
「……っ!?」
ライの言葉にきゅんっと指を締め付ける。自らの欲深く恥ずかしい身体の反応に、希望は思わず黙り込んだ。
けれど、希望を掻き乱していたライの指も止まってしまうと、求めるようにきゅんきゅんと締め付けている。まるで乱されたがっているかのようだ。
「さっきから、だめ、とかやだばっかりだけど、どうしたいの?」
「……っだ、だって、だめだもん……」
「だめなんだ? そっかぁ」
「ひっ、あぅっ……!」
希望が顔を背けると、ぐっぷりと捩じ込んでいた指を、ライはあっさり引き抜いてしまった。
「あっ……あぁっ……!」
急に腹を満たしていたものがなくなって、希望から物欲しげな声が零れ落ちる。
「どうしたい?」
「っ……!」
ライに見つめられて、希望もまたライを見つめた。
縋るようにライを見つめて、潤んだ瞳が蕩けている。
ぽっかりと、穴が空いたように寂しくなってしまった。
奪われた熱が恋しくてたまらない。
ライを見つめて、希望は黙ったまま、身体を震わせていた。ライはじっとそれを眺めていたが、不意に希望の頬に手を伸ばして触れた。
「ひぅっ……!」
そんな微かな刺激にすらびくりと身体が震える。ライは一度手を離したが、今度はゆっくりと指先で触れ、それから頬を手の平で包んだ。
「怖い?」
「……っぅん……?」
「さっきはいじめすぎたな」
「……っ……?」
希望は首を傾げながらも、小さく頷いた。
頬や顎の下を擽るように優しく撫でられて、うっとりと力を抜く。荒れ狂う情欲に抗う理性がゆっくりと溶けていく。
「次は優しくしてあげる」
撫でながら、ライは希望の耳元に唇を近づけて囁いた。
「……や、やさしく……?」
「そうだよ。どうする?」
低く響く声に頭が痺れて、くらくらする。
刺激を待ちわびて固く赤く染まる胸の突起も、震えながら涙を流して主張している自身も目に入る。
先ほどは希望を苦しめたはずの絶頂の記憶が、今は恋しい。
――……お尻をぐちゅぐちゅされながら、触られたら、どんなに気持ちいいだろう?
想像して、腹の奥でじゅくじゅくと熱が溢れる。
唯一の行き場さえ無くしてしまって身体中を巡って暴れ出しそうだ。
ひくっ、ひくっと腰が疼いて、止められない。
さわって。
キスして。
解放して。たすけて。
(……ほしい)
燻る熱に、戸惑いや羞恥心は押し退けられて、支配されていく。理性は溶かされ、阻むものは何もない。希望の瞳がとろん、と蕩けて、ライに向けられた。
目の前にいる男なら、どうにかしてくれると知っていた。
自分がどうすればいいか、それも希望はもうわかっていた。
「……ぜんぶ、さわって、……いかせて」
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