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第3話
「マジかよ……」
美風の身長は百六十九センチ。決して大きくはないが、日本人男性として見るならば平均的な身長だ。ただ美風は生粋の日本人とは言えない顔立ちをしている。目や髪の色素は薄く、肌は抜けるような白さ。目鼻立ちもはっきりとしていて美しい。しかし自分がどこの血を引いているのかは未だに分からない。
両親は美風が生まれて直ぐに事故で亡くなっている。しかも親戚はおらず、唯一の肉親は父方の祖父一人のみという境遇。祖父とは中学時代までは一緒に住んでいたが、自身の出生について訊ねた事はなかった。
何故ならどこの血を引いていようが、自分は自分だからだ。美風にとって、勉強に遊びにバイトにと楽しく生活が出来ていることが、何よりも幸せなことなのだ。
「あぁー重すぎる」
力はそれなりにあると思っていたが、相手は意識がない上に何よりもかなり大きい。きっと身長はゆうに百八十は超えているだろう。
「ふぅ……」
ようやく玄関ドアから退かす事が出来て、部屋へ入れる事が可能になった。
美風は鍵を開けてドアを開く。そして男に視線を落とした。さっきも少し感じたが、男の身体が少しずつ冷えてきている。この寒空でこのまま放置すれば無事では済まないだろう。下手をすれば死んでしまうかもしれない。
「これも死ぬんだろうか?」
出来るならこのまま放っておきたい。まだ〝普通〟の男なら介抱してやらないこともない。でもこの男は普通ではない。
暫く男を見つめていたが、思考を振り払うように無理やり男から視線を外した。部屋に入り鍵を閉める。
きっと簡単には死ぬことはないだろう。直ぐにでも目を覚まして、ここから立ち去るに違いない。そう自身に言い聞かせて美風はシャワーを浴びた。
風呂から出ると頭が少しスッキリとしていた。冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを出して、一気に喉に流し込む。
一息つくと美風の視線は玄関ドアへと吸い寄せられていった。
「勘弁してくれよ……」
男の気配を感じる。美風は眉を寄せた。
「放っておけ。オレには関係ないんだし」
カチカチと時計の秒針が時を刻む。
「……でももしそこで死なれでもしたら」
自身の中でのせめぎ合いが、更に苛立ちを募らせていく。
「あぁ、もうっ!」
美風はペットボトルをテーブルに乱暴に置くと玄関ドアを勢いよく開けた。
男は先程と寸分違わない体勢で座っていた。
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