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第20話

 人をデザートと一緒にするなと文句を言いたかったが、それよりも先にアリソンに仕掛けられてしまった。 「ん……んん」  アリソンの舌が縦横無尽に美風の口腔内を掻き回す。初めてした時と全く違う舌の動きに、美風は大きく戸惑った。  上顎や舌の付け根、裏筋、丁寧に擦りつつもアリソンの舌は淫靡な動きをする。嫌悪するどころか、擦られる度にゾクリと身が震え、鼻から抜ける息が大きくなっている。 「ん……ふ……」  痺れが全身に走っていくと、もう思考が追いつかなくなる。身体も弛緩してしまい、完全に蕩けてしまっていた。 (気持ち……いい……もう、ダメ……) 「ん……?」  不意に唇が解かれ、美風は不満と驚きとで少し意識が迷子になる。そしてアリソンの顔を見て一気に頭がクリアになった。  ホワイトシルバーの髪に、ブルーの瞳。魔力が一時的に戻っている姿。その美しさに見惚れそうになり、美風は軽く頭を振った。同時に自分がもっとと感じてしまったことに、動揺を隠せなくなる。  本当はキスにも催淫効果があるのではと疑ってしまう。結局は人のせいにしていないと、自分に起きた身体の現象を認めることが難しくなるからだ。  ジンジンと熱を持つ下腹部をアリソンに悟られまいと、テーブルの陰に下半身を隠す。そしてチラリとアリソンを見ると、何故かとても不満そうと言えばいいのか不機嫌な顔でいた。 「どうしたんだよ……まさか不味かったのか?」  そう訊ねる美風の顔が不安そうだったのか、アリソンは直ぐに首を振り、美風の髪を撫で下ろした。 「ミカは最上級の美味さだ。危うく吸いすぎるところだった」 「だったら何でそんなに不満そうな顔なんだよ」  美味しかったなら美味しかったですという顔をしろと内心で憤慨する。不満な顔をされると、与えている側からすれば気分も落ち込むというもの。 「不満ではなく葛藤している」 「葛藤? 葛藤ってなんの」 「このまま続けたら確実にミカを抱きたくなるからだ」 「っ……」  それは困る。アリソンの自制心に感謝しながらも、何かまだ隠していることがあるような気がしてならなかった。でも今はとりあえず自分は不味くないらしい事にも、安堵している美風がいた。 「そうだ、その姿を女性に見られたんじゃ」 「心配するな。抜かりない」  アリソンはキスに夢中になって、蕩けて放心していた女性を、今のようにサッと切り上げて消えたようだ。  美風はホッと胸を撫で下ろした。突然目の前の男がキラキラと眩い姿になったら、女性は恐らくパニックになるだろう。それを吹聴したところで信じてくれる人間はきっといないだろうが、女性の精神状態が疑われ兼ねない。そのような事にならなくて良かったと、美風は女性の身を案じてしまっていた。

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