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第36話

「あの人間とは少し距離を置いた方がいいな。ミカに執着し過ぎている」  公園へ入り、いつもの通りをゆっくりと歩く。アリソンの心配を滲ませた声に、美風はアリソンへと顔を上げた。 「そんな執着って……。確かにちょっと心配し過ぎな面と過保護な面があるけど……」 「それがだろ? 誰にも取られたくないという気持ちの表れだ」  そうなのか? と美風が唸っていると、アリソンがふとため息を吐いた。呆れたのかと思ったが違ったようで、その理由がすぐに分かる。  茂みから唸り声を発しながら、魔物が現れたからだ。 「……またかよ。あれから出なかったのに……」  三体の魔物が、美風らの行く手を阻むように対峙してきた。オーラの色が赤と灰色のためにキメラだと分かる。フォルムが三体ともに違う。それぞれが映画で見たような地球外生命体のような顔をしている。中でも一番気持ち悪いのは、顔が花の蕾のような膨らみを持ったキメラだ。蕾が花のように開くと粘着質な糸が引き、そこから牙がビッシリと覗く。しかも喉奥から二本の触手がうねうねと伸びている。 (あれはヤバい……気持ち悪い)  美風がジリっと少し後退ると、三体ともが反応し大きな口を開ける。美風はもしやとアリソンに小声で話しかけた。 「アリソン、一歩下がってくれるか?」  美風の言う通りにアリソンは直ぐに一歩下がる。キメラは無反応だ。そして美風は再び自身が一歩下がった。するとキメラらは威嚇するように唸り声を上げ始める。 「やっぱりオレを狙ってる」  それについてはアリソンは何も言わない。だが前回同様に青い炎で三体ともを瞬殺した。  灰が舞い散る中、ホッと息をついたとき。 「ミカ!」  突然アリソンが美風の腰を抱き抱えるようにして飛び退った。草むらへと転がり、(したた)かに体を打ちつけたが、二人とも急いで身体を起こす。 「いて……って、うそ」  頭を押さえると髪が何本かハラハラと落ちてくる。 「なにが……あった?」 「まだいる」  アリソンが顎で指し示す方向に別個体がいた。それは顔がゾンビのように腐りかけた酷い有様のキメラだ。腕の長さを自在に操れるようで、伸ばされていた腕を(うね)らせながら元の長さへと戻していく。  あと一歩遅ければ、いや、アリソンがいなければ頭を潰されていたかもしれない。それとキメラは美風に触れられる事が今ので明らかになった。 「アリソンさっきはありがとう。ほんと……助かった」 「当然のことだ。だがまだあと六体ほどいるな。奴らの気配が探りにくいせいで、状況が把握しづらい。それに魔力が足りない」  この間は一体だったが、今回は三体も倒した。アリソンの中では微力だという中から捻出してくれた魔力。本人が言う通りに、今夜はもう切羽詰まった状態だということが否応なしに分かった。

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