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第39話

 そのとき、ふとある事を思いついた。美風はダルい身体を振り切るようにして立ち上がると、アリソンの腕をとった。 「アリソン、本当に辛いところ悪いんだけど、部屋まで頑張って歩いてくれないか?」 「あぁ……分かった」  自力で立ち上がったアリソンの腕を、美風は自分の肩へと回して身体を支えた。ここからだとアパートまで五分程だ。 「もっとオレに寄りかかってもいいから。華奢に見えるかもだけど力は結構あるしさ」 「頼もしいな……」  アリソンはそう言いつつ、美風に負担がかからないように歩いている。  きっと魔界にいれば、アリソンだってこんな屈辱を味わうことはなかっただろう。何者かによって人間界へと送られ、魔力まで奪われてしまって。しかも人間界では魔力が一定値ないと動くのも辛くなる。  人間界へと送った者が何のためにアリソンを送ったのかは美風に分かりようがないが、魔力を奪った意図は何となく分かった。きっと強力な魔力を持ったままだと人間界が崩壊する。そう思ったのでは。しかしそれなら何故わざわざ人間界へ送ったのかと行き着き、ループしてしまう。  それでもアリソンは突然のことながらも、文句や愚痴も言わず今までやってきた。自分なら突然異世界へ送られたらパニックになって、悲嘆に暮れる毎日を過ごしているか、直ぐに死んでしまっているだろうと思う。  アリソンは本当に強い。そんな強いアリソンが少しの弱音を吐いた。救うといえばおこがましいが、いまアリソンを支えることが出来るのは美風しかいない。 「アリソン、手は大丈夫か?」  部屋にようやく辿り着き、アリソンには布団の上に腰を下ろしてもらった。そして美風の問にアリソンは問題ないと手のひらを美風に見せる。 「傷口がない……」 「普段だと一瞬で消えるが、今回はこんな小さな傷でも治りが遅かったな」  苦笑を浮かべるアリソンだが、人間の美風からすれば驚愕ものだ。傷が瞬時に治るなど、ファンタジーの世界でしか聞いた事がないため、実際に目の前で見ると驚きと羨望が湧いた。  でも今はアリソンの傷が無事だと分かれば、メインに集中したい。 「アリソン、その……単刀直入に言う。今から……セックスしよう」 「な……に?」  驚くアリソンの前に美風は膝をついて、シャツのボタンを自ら外していった。 「ミカ……」 「キスと血がダメなら、もうこれしか方法がないじゃん。それともこれもダメだったりするのか? 前にエッチした方がエネルギーが高まるみたいなこと言ってたよな?」  戸惑っているアリソンを見ないふりをして、美風は迫る。ここで拒否はされたくない。希望があるならそれに縋りたかった。 「確かに相手のエクスタシーを高めるとエナジーの濃度が上がり、少量でも十分な補給となる。だが一度も試した事がないのに、危険だ」 「でもやってみないと分からないだろ?」  それでもアリソンは首を縦に振らない。だけど美風は諦めない。

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