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第74話

 ゴテゴテとした装飾だが、白と金を基調にした内外装のため、とても美しい仕上がりになっている。  ミカエルは窓や天井、壁画などあらゆる場所に視線を走らせる。窓一つをとっても美しい曲線や曲面、彫刻が繊細で、優雅というものを上手く表現されている。  しかし人間界となぜこんなに似ているのか。 「なぁアリソン、この城のデザインっていうの? それもなんか人間界のものに似てるんだな」 「人間界のものに似てるのではなく、人間が真似たのだ」 「人間が真似た?」  まさか魔界に来たことがある人間がいたのかと、信じられない面持ちでアリソンの顔を見上げた。 「人間はよく悪魔を召喚していた時代があった。まぁ、今もたまにいるがな。その時召喚された貴族悪魔が人間に教えたようだ」 「そうだったんだ……」  そんな話をしていると、一際豪華で大きな扉の前までやって来ていたことに気づく。アリソンが立ち止まったため、ここがミカエルの部屋だろうかと酷く焦った。 (ここは……無いよな? だってドアだけで人間界で住んでた部屋くらいの大きさだぞ)  装飾や彫刻もかなりディテールにこだわった豪華な扉だ。 「陛下?」  少し戸惑いの色を含んだラルフの声が、後ろからかかった。アリソンは直ぐにラルフに下がっていいと告げる。 「ですが、こちらは陛下の私室」 「え!?」  ミカエルは驚いて大きな声を上げてしまう。広い空間のため、声が反響してしまう程だ。  これだけ豪華な扉なのだから、ミカエルの部屋ではないことは当然だ。だったら何故アリソンはここでラルフを下がらせるのか……。  答えが見えてきたミカエルはまたも焦った。 「ミカは我の部屋で過ごしてもらう」 (やっぱり!!) 「ちょ、ちょ、ちょっと待って! 王様の部屋にってそれはさすがにマズイんじゃないの?」  焦るミカエルの羽は、閉じたり開いたりと忙しない動きを見せる。その横でラルフが慇懃にアリソンへと頭を下げた。 「畏まりました」 (はい!?)  さっきまで渋るような気配を見せていたのに、ミカエルが王の部屋で過ごすことは、すんなりと了承するのかとミカエルは呆気にとられた。 「ではミカ様、本日はごゆっくりとお過ごしくださいませ」  極上とも言える微笑みを向けて、丁寧に頭を下げたラルフは、再び上機嫌で二人の元から下がって行った。 「え……いいの?」 「もちろんだ」  アリソンは大きな扉を自身の手で開けると、ミカエルに入るようにと腰に手を当ててきた。ここで無理だと言ったところでアリソンは引かないだろうし、最悪部屋を与えてもらえなくなるかもしれない。そうなると困るなと、ミカエルはおずおずと魔王の部屋へと入った。

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