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第90話
翌日、アリソンと王都外へ出て、ルシファーと接触を試みることにした。護衛に元帥と大将がつくなど、さすが魔王だ。
一行は先ず、城から東に位置するリオーネ地区へ赴いた。山林が多く、下級の魔獣が多く住んでいるという。ルシファーが潜むなら、ヴァンパイアと一緒の確率が大きい。そのため、まずは日が登らない地方ということで、ここリオーネに来た。辺りはもちろん暗闇で静かだ。それは恐らくミカエルら四人が山の麓までテレポートしたのだが、魔王が訪れたことで魔獣が逃げてしまった事が大きい。
「ここら一帯にはいないようですね」
ヘンリーに同意するように皆が頷く。ルシファーが潜んでいるなら、下級魔獣は初めからこの地にはいないだろうという判断からだ。
広大な魔界のために、直ぐに見つかるとは誰も思っていない。
ここへ来る前、昨日のようにルシファーに何度か頭の中で語りかけてみた。しかしルシファーは応えない。これは直感だが、ルシファーは聞こえているはずだ。それなのに応えないという事は、ミカエルとは会うつもりがないということ。
やはり警戒心を与えてしまったのだ。ミカエルの焦燥がまたじわりと顔を出す。
「そう言えばミカ。昨日レオンと会ったそうだな。しかも奴、ミカと友達になったとかほざいていたが」
傍らに立つアリソンが、ミカエルを自身へと引き寄せると、耳元でわざわざそう言う。おかげでミカエルの焦燥感は直ぐに消えていった。きっとアリソンはミカエルの心の機微を感じ取って、気を逸らしてくれたのだろう。アリソンの優しさにミカエルは微笑んだ。
「うん、昨夜レオンが来てくれて、お祝いメッセージをくれたんだよ。それにパスト地方へ行く時も背中に乗せてくれたしで、もうめちゃくちゃカッコよくて興奮した」
「ミカを驚かせようと、俺から会わせるつもりだったのにな」
残念だとアリソンは笑う。
「兄上が黒龍の背中に乗ったと聞いた時は、私も驚きましたよ。あの誇り高き黒龍が、主人以外の者に接触するなんて普通では考えられないのに。私も乗りたかったですよ」
悔しそうにエイダンが言うため、皆の笑い声が静かな麓に響き渡る。
「残念だが、エイダン兄上が乗れる機会はないでしょうね」
「そんな~。そこを陛下か、ミカ様が口添えをなさってくれたらもしかして」
レオンの話に花を咲かせながら、一行は次の場所へと移動した。
王都の外へ出ると、リオーネもそうだったが、何が潜んでいるのか分からず、不気味な空気を孕んでいた。瞬間移動が出来るとはいえ、アリソンらも王都外へ出ることは滅多に無いため、飛んだ先に何が待ち受けているか予測が出来ないようだ。
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