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第96話
今日は昨日ライカンスロープから情報を得た、ヴァンパイアの本拠地に向かう。
アリソン、ヘンリー、エイダンの四人で机を囲み、地図を広げた。すると地図が3D画像のように地図上に浮かび上がる。
「凄い……」
ミカエルは驚きながら、あらゆる角度から隅々まで確認していく。
「なんか凄く荒れた地だな……」
「そうだな。俺もポリノーズ地方など一度も訪れた事がないからな……」
アリソンの言葉にヘンリーとエイダンが頷く。
ポリノーズの最南端。荒れた地に、そこだけが別次元のような立派な建造物がある。
ミカエルが人間だった時にテレビで見た、イギリスのバッキ○ガム宮殿のような豪華な造りだ。
「こんな立派な城を造っておきながら、普段は使わないって、贅沢だな」
「ここは元老院が集まる場だろう。ヴァンパイア独自の制度で王なる男がいる。名は確かゲイリーだったか?」
アリソンがヘンリーに訊ねると、彼は頷く。
「はい。ゲイリー・ベルナッチという男がヴァンパイアをまとめています」
何かの議会などがある時に、議員や貴族風情が集まるという。
「そうなんですね。では今はルシファーがヴァンパイアの長になってるってことか……」
最後は言葉に棘が混ざるミカエルに、三人は同調するように頷いた。
「とにかく直ぐに向かおう。ちまちまと遠方から出向くよりも、一気に城の上空へと飛ぶ」
「御意」
四人はそれぞれ二人ずつ、背中を合わせる形をとる。こうすれば向こうに着いた時、背中を襲われる確率がぐんと下がるからだ。
ミカエルは飛ぶ前に、ルシファーへとテレパシーを送ったが、やはり無反応だった。
「行くぞ」
アリソンがミカエルの手を握り、声をかける。ミカエルは頷き、アリソンの手を握り返した。
(ルシファー、今日こそ息の根を止める)
沢山の者を苦しめてきた償いは、その身をもって償わせたい。そう強い意欲で向かったが。
「……いない」
暗闇に浮かぶ不気味な城。風が吹きすさぶ中、四人は城の屋上へと降り立ち周囲を見渡すが、空を旋回する鳥のような生物以外の気配は、まるで感じられなかった。
城の周囲の木々も枯れ果て、土埃が舞っている。それなのに城が綺麗に保たれているということは、常に誰かが管理しているのだ。
「ルシファー!!」
無駄な呼びかけだが、ミカエルは声の限りに叫んだ。返ってくるのは静寂。
まだ三日目なのか。もう三日目なのか。捉え方は各々違うだろうが、ミカエルの中ではもう三日目だ。
ミカエルは羽を広げ、城の周囲を旋回した。アリソンらは確実に敵がいないと判断しているため、ミカエルの好きにさせているようだった。
(もう三日目だと言うのに。あと七日しかない。クソ……どこ行った)
「ミカ! そろそろ戻っておいで」
アリソンの呼びかけに、ミカエルは荒廃した地を眺め回してから、三人の元へと戻った。
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