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第99話

「くっ」  ルシファーが少しよろめく。不死身に近い身体と言えど、腕を切断されれば相当のダメージを食う。だがミカエルの身体が直ぐに修復された事を考えると、ルシファーの腕も直ぐに回復するだろう。  なぜ堕天使となったはずのルシファーが、不死身に近い存在となっているのかはミカエルも分からない。想像だが、恐らく神に一番近い存在だった事が関係あるのかもしれない。だから特殊な方法でしか倒せない。それは厄介な存在だとしか言いようがなかった。  ミカエルはアリソンと目配せをし、息を合わせて背中を向けているルシファーへと一気に飛び立った。アリソンの手から魔剣が現れたと同時に、ミカエルは神剣を抜く。  汗で滑るグリップを、両手でしっかり握りしめる。ルシファーの右腕が徐々に再生される中、ルシファーが振り向いた。 「アリソン!」 「ミカ!」  二人が愛を乗せて名を呼び合う。息がピッタリと合ったとき、神剣と魔剣の剣先がルシファーの胸に深く突き刺さる。はずだった。 「なっ……!?」  一本の剣先が宙に舞う。それはスローモーションのように放物線を描き飛んでいく。アリソンが愕然と目を見開き、ミカエルの神剣に目を向けた。  アリソンの魔剣はルシファーの胸を深く突いている。しかしミカエルの神剣がルシファーの胸に剣先が触れた瞬間、刃の半分が折れてしまったのだ。 「ぐ……なんの……真似だ」  ルシファーは血を吐きながら、ミカエルとアリソンに怒りの目を向ける。  アリソンが魔剣をルシファーから抜くと、魔剣がアリソンの手の中へと消えていく。そしてアリソンは直ぐにミカエルを自身へと引き寄せた。 「あ……ぁ……なんで」  ミカエルは半分に折れてしまった神剣のグリップを、震えながら持つ。  どうして折れてしまったのか。ルシファーの身体に少し触れた程度なのに。神剣はそう容易く折れるものではない。いや、絶対に折れない。神が作った神剣なのだから。それなのに折れてしまった原因は。 「……オレだ……オレのせいだ」  ガタガタと全身の震えが大きくなり、頭の中では脳が撹拌されたようにぐるぐると回る。そのせいで視界もグラついてくる。 「ミカ、しっかりしろ!」  いつの間にかルシファーから離れ、ヘンリーとエイダンの元へ戻っていた。しかしミカエルの頭の中はもはや真っ白な状態となっており、アリソンの言葉も耳には入ってこなかった。 「くっ……忌々しい……」  魔剣のパワーで胸を貫かれた為なのかは定かではないが、ルシファーの右腕の再生が前腕の途中で止まっていた。ルシファーは胸から溢れる血を左手で抑えながら、何かを唱えた。

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