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第100話
薄闇の中に突如と小さな赤い光が浮かび上がる。それは数え切れない程あり、ミカエルらをぐるりと取り囲んでいた。
「ヴァンパイアか」
ヘンリーとエイダンがアリソンへと頷き、臨戦態勢に入る。
ルシファーが何かを唱えていたのは、ヴァンパイアらを呼び寄せるためだったようだ。それだけ今のルシファーはかなりのダメージを受けているということだ。この機に攻めて、倒せる相手ならそうしているのにと、ミカエルは悔しさで歯噛みした。
しかし今はとにかく、目の前のヴァンパイアに集中しなければならない。ミカエルは思考を切り替えるために軽く頭を振った。
「ミカ、大丈夫か?」
「……うん大丈夫」
心臓は完全に修復した。しかし心は重い。アリソンの気遣いにも、ちゃんと顔を見て返事が出来なかった。アリソンの視線が突き刺さるが、今この時だけは何も感じないように心に蓋をした。
「ほぉ、これが魔王の伴侶とやらか」
一人のヴァンパイアが一歩前へ出る。アリソンの髪色より白い頭髪に、真っ白な髭をたくわえた男がニヤリと笑う。
「天使の血は、一体どんな味がするのやら」
そして男は大きく口を開けて鋭い牙を剥いた。それが合図なのか、一斉にヴァンパイアが飛び掛ってくる。
「陛下!」
「あぁ」
瞬時にアリソンがミカエルを抱え、上空へ飛ぶ。ヘンリーが魔術でヴァンパイアらを弾き飛ばし、エイダンが攻撃するが、ヴァンパイアたちの威力は凄まじかった。何分 ヴァンパイアの数が多すぎる事が最大の難点であった。だが二人の心配をしている余裕はミカエルらにもなかった。
「ミカ、俺から絶対に離れるな」
「分かった」
アリソンは上空から雷 を広範囲に放つ。さすがアリソンの絶大な魔力。かなりの数のヴァンパイアらに雷が命中し、倒れていく。しかし彼らの動きは速く、攻撃を躱す者がいるなか、仕掛けてくる者もいて、なかなかに苦戦を強 いられることになった。攻防戦が激化する。
ヴァンパイアはパワーもあり、敏捷性も優れている。ミカエルにはとてもじゃないが太刀打ち出来る相手ではなかった。アリソンの足を引っ張らないように、ミカエルなりにアリソンの動きを読んで動いているが、足手まといになっている事は歴然としていた。
(このままじゃ……こっちも無事では済まない)
ミカエルはヴァンパイアの攻撃を何とか躱しながらルシファーを探そうとするも、その隙さえもなかった。
「このままでは埒が明かない。一気に殲滅する」
アリソンはミカエルを襲うヴァンパイアを倒しながら、そう言う。
「でもそれじゃ、他の生命体がいれば巻き込まれるだろ」
「ここには、恐らくコイツらしかいない……っ」
話す時間さえも与えないように、アリソンへと一気に五体のヴァンパイアが襲う。
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