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第101話
個々のパワーが強烈なのに、それが一気に五体も襲ってきたため、アリソンは一瞬ミカエルに背を向けるしかなかった。
流石に一人で五体はキツいだろうと、ミカエルが助けに入ろうとした時、脇腹に激痛が走った。
「あぅ……っ」
「ミカっ!?」
アリソンは五体を炎で消し去ると、近くにいると思っていたミカエルを目で探す。
「……ここ」
「ミカ!」
ミカエルに焦点が合ったアリソンの青い目が、大きく開く。脇腹から血が溢れ、痛みでミカエルは上体を少し屈ませる。
ヴァンパイアの拳がミカエルの肉を抉っていた。それを美味そうに舐めている。しかも拳を突かれたせいで、アリソンからも引き離されてしまった。が、アリソンから放たれた衝撃波のようなものを受けたヴァンパイアは、無情な程に木っ端微塵に吹き飛んでいく。周囲にいたヴァンパイアも巻き込まれる程の威力だ。ヴァンパイアの至福の時間は一瞬だった。アリソンの怒りの気が少し離れたミカエルにも伝わる。
「ミカっ」
心配でたまらないといった様子でアリソンは名を呼ぶ。その時、ミカエルに気を取られているアリソンに、ヴァンパイア一体が襲おうとした。
「アリソン!」
「ぎゃっ!」
だが突然ヴァンパイアは、何かに弾かれたように身体が吹き飛んでいった。そしてそのまま地上へ落下していく。
「っ……」
何事かとアリソンとミカエル、そして攻撃を仕掛けていたヴァンパイアらも動きを止めた。落下していくヴァンパイアの額は何かに撃ち抜かれたようで、額から血が流れる中、足先から徐々に灰になっていく様子が分かった。
「銃弾……恐らく銀だな」
アリソンのセリフにヴァンパイアらがざわめき出す。ミカエルは根源を探すために周囲を見渡した。そこである物を発見し、ミカエルは息を呑んだ。
(あれは……)
ヴァンパイアと同じく赤い光の大軍が、東の地の方からこちらに押し寄せてくる。
「ライカンだぁ!」
一人のヴァンパイアが叫ぶと、それは一気に他のヴァンパイアへ伝わる。そして一斉にライカンへと向かっていく。地上で闘っていたヴァンパイアも、ライカンへと飛ぶように向かっていった。
その場にミカエルら四人とルシファー。そしてルシファーに付き添う一人のヴァンパイアが残る。
ヴァンパイアの中では魔王よりもライカンスロープに重点を置いているようだ。古から続く深い因縁がよく分かるというもの。
「ルシファー……てめぇ」
ミカエルが唸ると、アリソンが宥めるようにミカエルの背を撫でる。しかしアリソンにも怒りがある。その手からバチバチと青いパワーの光が放出された。ルシファーへと攻撃を仕掛けようとすると、ヴァンパイアがルシファーを抱えてその場から消えてしまった。
《ミカエル、余の傷が癒えたらまた会おう》
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