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第105話

「ミカ!」 「ん……アリ……ソン……」  視界が徐々に(ひら)けて、愛しい顔がやっと見れたと思ったら、思いっきり抱きしめられ顔が見えなくなってしまった。 「ミカ、ミカ……ミカ」  アリソンの声が震えている。どれだけ心配をかけてしまったのか、見るまでもなかった。こんなに体を震わせて、力一杯に抱きしめる腕は、もう二度と離したくないという強い想いの表れだ。  ミカエルは反省や後ろめたさ、嬉しさ、あらゆる感情が一気に押し寄せ、しゃくり上げてしまった。 「……ミカ?」  アリソンは直ぐにミカエルの顔を覗き込む。驚きと心配とでアリソンの眉尻も下がってしまっている。 「ごめん……アリソン……本当にごめん……オレ……」 「謝るのは一切無しだ、ミカ。こうしてやっと俺を見てくれて、俺の傍にいてくれてることがどんなに嬉しいか。頼むから泣くのはやめて、今すぐ俺を抱きしめてくれ」  ミカエルは二人の大きなベッドに仰臥した状態で、アリソンの首筋へと抱きついた。  三日間でも、待っている身ではとてつもなく長く感じた日々だっただろう。そしてアリソンが、あれから一時もミカエルの傍から離れなかった事が、その肌からも伝わった。  アリソンのシャツからは血の匂いがする。髪も乱れていた。風呂も入っていないのだろう。汗の匂いもする。おそらくしっかり睡眠もとれていないのでは。臣下の心配も全て聞き入れずに、ずっとミカエルの傍にいてくれた。  こんなに心配させてしまって、申し訳ない思いで泣き止みたくても涙が溢れて止まらなかった。  どんな時でもミカエルを一番に想ってくれる。本物の〝愛〟がここで示されていた。  ミカエルの中でもアリソンへの愛が確実に育ち、溢れて止まらなくなる。  ようやく落ち着いて、二人は暫く見つめ合う。お互いの重なった視線が熱さで溶けてしまいそうな程に。  そしてゆっくりとお互いの顔が近づき、唇を重ね合った。アリソンのカサついた唇が徐々に湿ってくる。 「ん……」  深くなればなる程に、アリソンの執着がよく伝わってくる。それはきっと逆もまた然りだ。  暫くして、名残惜しそうに唇は離れていく。目覚めたばかりのミカエルにまだ無茶は出来ないとばかりに。 「アリソン……」 「ん?」  ミカエルはアリソンに支えてもらいながら、上体を起こす。そしてミカエルの横にアリソンは座った。 「神剣の事だけど」  ミカエルの横には、折れた神剣がシルクの布に包まれて置いてあった。神が折れた刃を戻してくれるという奇跡は、起きなかったようだ。 「こんな事になって……本当にごめん」 「ミカ言っただろ? 謝るなと」 「……うん。でも折れてしまったのは、オレがアリソンの愛を疑っていたからなんだ。天主様にも忠告されていたのに、ずっとその意味が分からずにいた」 「……」  さすがにアリソンも、愛を疑われたことに言葉が出ないようだった。  

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