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第115話

 アリソンが言っていた通りに、魔剣で刺された傷はまだ治っていないようで、巻かれた包帯には血が滲んでいた。そして切断された右腕も手首から先は回復出来ておらず、無い状態だ。 「魔剣には魔王の力が込められていてね。治療も無駄であったし、余の治癒力をもってしても、なかなか治らないようだ。厄介なものよ」  ミカエルの視線にルシファーは陽気に答える。完全に身体を貫いた傷はまだ治っていない。  ミカエルの緊張が張り詰める。直ぐに剣を抜けるように意識を集中させた。 「ミカエル」  ミカエルを呼ぶルシファーの声。それは天界で過ごしていた時代によく聞いた、甘く優しい声だった。しかしミカエルは、更に警戒するようにルシファーを窺う。 「余の隣へと戻ってこい。あんな魔王と一緒にいるよりも、遥かにミカエルを満足させてやれる」 「断る。アリソンはオレの唯一無二だ。お前と共に生きろと言うなら死んだ方が幸せだ」 「そうか……」  悲しげに呟いたかと思えば、やがてルシファーの唇はゆるく口角が上がっていった。 「……全く、可愛げのない弟だ。生まれてこの方、お前と双子だという事を、ずっと忌々しく思っていたが……。これで心置きなくお前を消せる」  ルシファーが凶悪な笑みを浮かべた瞬間、ヴァンパイア達が瞬時にミカエルらを取り囲んだ。 「傷が修復出来ない程にミンチにしてやれば、流石にお前も生きては居られまい」 「またヴァンパイアかよ。なら、こっちもだ!」  ミカエルが念を込めて叫ぶと、どこからともなくライカンスロープが現れた。 「ミカ様!」 「アルベルトさん! ヴァンパイアは宜しくお願いします!」 「もちろんです! および頂き感謝です!」  アリソンの協力を得て、瞬時にミカエルの傍へ飛べるように、ライカンらも準備をしてくれていたのだ。ライカンとヴァンパイアは、顔を合わせるなり直ぐに激突し合う。ヘンリーとエイダンはアリソンからの命令で、ミカエルから片時も離れないようにしている。ミカエルはこの混乱に乗じて、ルシファーへと一気に飛び込んだ。  だがルシファーの動きの方が速く、素早く飛び退った。エイダンが瞬間移動能力を発揮し、ルシファーを追い詰める。だが、そこへ一人のヴァンパイアが突然現れ、エイダンへと攻撃をしてきた。 「エイダンさん!」  凄まじい二人の激突が始まる。 「ミカ様大丈夫です。ここはエイダンに任せましょう」  ヘンリーがそう言うならば、きっと本当に大丈夫なのだろう。弟の力量は誰よりも知っているのはヘンリーだから。ただ相手をしているヴァンパイアは、以前ルシファーを護っていた男、ゲイリー・ベルナッチなのだ。ヴァンパイアの王と呼ばれる男だった。

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