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第116話
「でも……あの男が一番の妨げになる」
ミカエルがそう呟くと、ヘンリーはその真意をくみ取ってくれたようだ。
ルシファーを倒すにはヴァンパイアが邪魔な存在だが、一番にルシファーを近くで護るゲイリーが邪魔だった。ここで一気に三人で片付けてしまいたい。ミカエルは神剣ではなく、今はアリソンから貰った剣のグリップを握った。三人でなら倒せる。そう意気込んだとき、ミカエルの前に横切る影があった。
「ミカ様」
「っ……」
驚くミカエルの前に、アルベルトが跪いていた。ミカエルをまっすぐに見据える緑がかった蒼い目が、何かを訴えかけていた。
「アルベルトさん」
「ご無礼を承知で申し上げます。あの者……ゲイリーは私にどうか」
そうだ。アルベルトにとって一番倒したい相手はゲイリーだ。長同士の闘い。律儀に許可を取ろうとするアルベルトに、ミカエルは申し訳ない思いでいっぱいになる。一秒でも速くやり合いたいはずだ。
「思う存分に闘ってください」
ミカエルは直ぐにそう言い、エイダンを呼んだ。
「ありがとうございます!」
エイダンと入れ替わりに、アルベルトがゲイリーの目の前に現れる。ゲイリーが驚くが、直ぐに二人は睨み合い対峙した。ミカエルらも思わず息を呑むシーンだ。
そしてアルベルトが狼男に変わると、二人の因縁の対決が始まった。お互いのパワーは凄まじく、二人がぶつかり合う度に、耳を塞ぎたくなる程の激突音が響く。ミカエルはアルベルトの無事を、ただただ祈るしかなかった。
そしてふと妙な空気を感じて、ミカエルの全身に緊張が走った。ルシファーが何かブツブツと唱えている。
(ヤバい! また何かを召喚するつもりか)
ルシファーまでの距離はおよそ二十メートルほど。ミカエルは真上に一気に飛び上がると、ルシファーへと剣を向け、急降下する。まだ気付いている様子はない。
(今だ!)
剣を思いっきり引き、そして勢いのまま突き入れる。ルシファーの背中から、確かに肉体に剣先がめり込んでいく手応えがあった。
「っ!?」
やったと喜んだのもつかの間、ルシファーと目が合う。ルシファーの目は紅く光り、ニヤリと口角が上がった瞬間、ルシファーから膨大なエネルギーが放出された。
「ミカ様っ!!」
衝撃波が辺り一帯を飲み込んでいく。ミカエルはヘンリーとエイダンに身体を覆われ支えられるも、気を抜くと一気に吹き飛ばされそうであった。
「っ……なんだ」
しかしそれも一瞬だった。周囲にいるヴァンパイアとライカンも飛ばされた者がいるようだが、無事だった者は直ぐに闘いを始めていた。アルベルトとゲイリーも既に闘っていた。
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