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第118話

「そう、アリソンと共に!!」  ミカエルが高らかに叫んだ瞬間、バングルから眩しい程の青い光が放たれた。正視することが困難な程だ。 「なっ……!?」  ルシファーはあまりの光源の強さに、腕で顔を覆った。  そしてバングルから魔界の王が現れる。 (アリソン!)  ミカエルはアリソンに目で合図をする。アリソンは直ぐに力強く頷く。光で目が眩んでいるルシファーへと二人は、息を合わせ突っ込んでいった。 「ルシファー!! 安らかに眠れぇ!!」  アリソンの魔剣とミカエルの折れた神剣が、ルシファーの胸元を突いた。 「ぐッぁぁぁー! ……ミカ……エルっ!?」  ルシファーが驚愕の表情でよろめく。  ミカエルはヘンリーらが演技だと直ぐに察し、止めに入らなかった事を心中で感謝しながら、ルシファーを睨み据えた。  そしてそこで驚く現象が起きた。魔剣と神剣が同時に紅く光りだしたのだ。 「ミカっ」  アリソンがミカエルを抱き寄せ、ルシファーから距離を取った。その間も二つの剣が紅く光っている。 「クソっ……どう……なってるんだっ!」  ルシファーが剣を抜こうと躍起になっているが、どういう訳か、二つの剣はビクリともしていない。それどころか益々紅く発光しだした。もしかして本当に上手くいったのだろうかと、ミカエルは期待に胸を膨らませた。 「ア、アリソンっ」 「あぁ……」  二つの剣はやがて重なり合い、まるで溶け合うように見る見るうちに一つになっていく。ミカエルとアリソンは息を呑んで事の成り行きを見守った。  どうか上手くいってくれ。もうルシファーを滅する術は無くなってしまったのだ。ミカエルは手を組み必死に祈った。 (どうか、神よ!) 「があぁぁぁーー」  ルシファーが悲鳴に近い声を上げ、悶絶し始めた。ヘンリーらも息を呑み、そして闘っていた全てのヴァンパイア、ライカンらもルシファーの異変に気づき、動きを止めた。  苦しそうな呻き声を上げるルシファーの身体は次第に、何か黒い灰のようなものが舞い上がっていった。  ミカエルの鼓動が速くなる。ルシファーがついにこの世から消滅する。その最期をしっかり見届けたい。ミカエルはアリソンの手を掴むとギュッと強く握りしめた。  これは本当に最後の大きな賭けだった。なぜ神が失敗したミカエルの前に再び現れたのか。ミカエルを慰めるだけなら神はきっと現れなかっただろう。そう考えると、神はまだミカエルに希望を託していたことになる。そう考えた方が自然だった。  やり方など知らない。また同じ方法で行けるのかも分からない。だけどミカエルはそれしかないと思った。魔剣と神剣が必要だと言うならば。  そしてその機会を作るためにはアリソンと行動は共にしない方が、ルシファーを油断させる事が出来ると考えた。  バングルはアリソンの一部と同じような物だから、ミカエルの強い想いとキスで、アリソンを呼び寄せる事が出来ると聞き、もうこの方法しか無いと思ったのだ。 「ミカエ……ル……まお……う……許さ……」  顔から徐々に灰になっていく。サラサラと小さな砂粒が風に乗って流れていくようだ。  天界での長い時間を、共に過ごしてきたことを思えば、少しは悲しいのかと思ったが、今のミカエルの心情は無に近かった。  彼の弟として暮らしてきた事も、彼を憎み天界で闘ったこともはるか昔の事で、なんの感慨も湧かない。薄情なものだと思うが、それ程までにアリソンと出会う前のミカエルは、ただ時代に流され、毎日同じことの繰り返しを過ごしてきた。刺激など何もなかった。神のために生き、神のために闘った。全ては神のためだったのだ。 (ルシファー、お前の魂も全て消えてしまう。だからもう二度甦ることは出来ない)  そこで突然ルシファーの全身が一気に灰となった。ルシファーを象った灰は、強風によって一気に崩され、飛ばされていく。  ルシファーは跡形もなく消え去った。 「さようなら……」  魔剣と神剣も一緒に赤い輝きを残して消えていった──。

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