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第119話

「ルシファー様!」  ゲイリーがルシファーがいた場所へと跳ぼうとしたとき、ゲイリーの胸元から血が噴き上がった。 「かはっ!」  アルベルトの腕がゲイリーの胸元を貫いている。ゲイリーの口元から大量の血が吹き出た瞬間に、アルベルトは手刀でその首を刎ね飛ばした。ゴツっと鈍い音を立て、ヴァンパイア城の屋上にゲイリーの頭が落ちる。  ミカエルは目を背けそうになったが、しっかりと結末をその目に焼き付けた。ゲイリーの身体は首を刎ねられたことによって、徐々に灰となり、散っていった。 「闘いの最中に、敵に背中を見せるなど笑止千万!」  ライカンスロープの長、アルベルトが高らかに勝利宣言をした。 「おぉぉぉ!」  辺り一帯からライカンスロープの勝利の雄叫びが上がる。負けたヴァンパイアは、動ける者はすぐさま逃げていった。それを追う者はいない。 (終わった……終わったんだ……) 「ミカっ!?」  安堵した途端、脳内が大きくグラつく。直ぐにアリソンの逞しい腕に支えられる。だがアリソンの腕の筋肉が、緊張のために硬くなったのが分かった。 「ミカ……羽が……なぜ」  アリソンの動揺した声に、ミカエルは自身の背後へと顔を向けた。ちょうど真っ白な羽が、小さな煌めきを残して消えていく瞬間だった。  背中が軽くなったのに、急激に全身が重くなり、ミカエルはアリソンの胸にしがみついた。 「アリソン……なんかちょっと苦し……」 「ミカっ、直ぐに城へ運ぶ。もう少し辛抱してくれ」  アリソンは急いでミカエルを横抱きにした。 「兄上、先に城へ戻る。後は任せた」 「ま、待って、アリソン」  ミカエルは慌ててアリソンに待つよう求めた。 「ミカ……?」 「ごめん……その前に、アルベルトさんいらっしゃいますか……?」 「はい、御前に」  ミカエルの呼びかけに、アルベルトは直ぐに人間へと変貌するとアリソンの前で跪いた。ミカエルはアリソンに下ろすよう伝えると、渋々ながら下ろしてくれた。そしてアルベルトと同じ視線になるよう、重い身体で膝を突いた。 「今回の闘いの勝利おめでとうございます。そして言葉では言い尽くせないほどに助けて頂きました。本当にこの度はありがとうございました。また改めてお礼をさせて下さい」 「お礼を申し上げるのはこちらです。このような機会に恵まれたのも全てミカ様のお陰です。感謝しても全く足りないほどです。本当にありがとうございました」 「ありがとうございました!!」  突然アルベルトの後ろにライカンが集まり、頭を下げて跪いた。圧倒されるライカンの数。まだ城下にもたくさんのライカンがいた。

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