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第122話

◇ 「ミカ様! おぉ……なんてお美しいのでしょうか」  ラルフがまたハンカチで目元を抑え、感動して震えている。 「そ、そうかな?」 「はい!! もう魔界中の者がミカ様に見惚れてしまいます!」 「それは困るな……」  そう言いつつ、眩しそうに目を細めながらアリソンが居室へと入ってきた。一斉に侍女やラルフが下がり跪く。 「アリソン!」  そう言うアリソンも、ミカの目がハートになる程に美しかった。  グレーのレース調の長衣は足首まであり、その上に漆黒の外套を羽織っている。長衣と外套には、眩い宝石や装飾類で飾られ、更に品の良さと豪華さを演出していた。  そして頭上には、肖像画にもある王冠が乗っている。〝魔王〟という風格にミカも思わず息を呑んだ。 「アリソン、カッコいい……」 「ありがとう。だが、俺よりもミカだ。本当に美しい……。何だか今日はやめたくなってきたな」 「へ、陛下」  ラルフが青くなるのを、アリソンは冗談だと笑う。  今日は王妃ミカのお披露目の日だ。民衆がミカの姿を一目見ようと、真魔城へと集まっている。そのため二人は正装しているのだ。  ミカは全身真っ白のコーディネート。アリソンと同じくレース調の長衣に、床を引き摺るほどの長いベールを頭に被せ、その上にはダイヤモンドのような美しい宝石のティアラを乗せている。  アリソンとラルフがオーバーに言っているように聞こえるが、オーバーでもなくミカは本当に美しかった。きっと誰もがその麗しさに惹き付けられてしまうだろう。  ミカは鏡に映る自分を見つめながら、堕天使となってからの今日までの一週間を思い起こしていた。本当にとても目まぐるしい日々だった。  一日目はアリソンと、誰にも邪魔されない時間を過ごす事が出来たが、ほぼベッドの上だった。アリソンの絶倫ぶりに、ミカはほとんど応えられず、へばってる時間が多かった程だ。もちろんそれだけではなく、ゆっくりと話しも出来た。  アリソンが知りたがったルシファーとの闘い。ルシファーが時間操作の術を使い、ミカエルの天使としての時間を奪ったことなど、詳細を話して聞かせた。あの時、一瞬ミカの頭は真っ白になった。しかし直ぐに冷静になる事が出来た。目の前にいるルシファーを、もう二度と逃したくはない。その強い思いだけで、ミカは自然とあの行動に出ていたのだ。逆によく、ヘンリーとエイダンが止めに入らなかったものだ。そのお陰で上手くいったのだが。  後で聞いたことだが、彼らもまた、ミカを信じていたからだと言う。これほどに嬉しい事はないと、ミカはまたもやヘンリーらの前で、泣いてしまっていた。  アリソンの前でだけしか泣かないと誓ったあの決意は、一体どこへ……。

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