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第15話
行きたくないと駄々を捏ねる巧さんを何とか着替えさせる。
スリーピーススーツを着た巧さんはびっくりするぐらいかっこよくて大人の色気が半端ないのに、駄々を捏ねる姿は子供みたいでギャップが可愛いなんて、つい思ってしまう。
「似合ってますよ、巧さん。お仕事頑張ってください」
「そう? 嬉しいな。……はあ、仕事嫌だなぁ」
俺をぎゅうぎゅうと抱きしめながらかれこれ五分ぐらいは似たようなやりとりをしている。
仕事に行きたくない気持ちはわかるけど、巧さんのポケットに入っているスマートフォンのバイブがさっきからひっきりなしに鳴っているから、こちらもそわそわしてしょうがない。
「あ! 葵くんがいってらっしゃいのキスしてくれたら、やる気出るかも」
「いってらっしゃいのキスって……」
何その新婚さんみたいなやり取り……! いってらっしゃい、アナタみたいなのを俺にやれと? は、恥ずかしいんだけどっ!!
……したければ、巧さんからしてくれれば良いのにと恨みがましい目線で見上げると、はいどうぞと言わんばかりに目を閉じる巧さんの顔があった。
も〜……!
俺より少し背の高い巧さんのために背伸びをして、唇を合わせる。
「巧さん、いってらっしゃ……」
言いかけた言葉は、巧さんからしてきたキスで塞がれた。
口腔にぬるついた舌が入ってきて、俺の舌を絡めとる。
否が応でも巧さんとした激しいセックスを思い出してしまうようなキスだった。
「んっ、」
「…………やる気出たかも? うーん」
散々俺の口内を好き勝手した割には随分と気のない返事だった。
「しょうがない、行ってくるよ。二日間ありがとう。たくさん無理させちゃったし二日分+おまけで28万円分減らしておくね。これはタクシー代、あと180万円分よろしくね?」
俺に万札を握らせたあと、最後にちゅっと触れるだけのキスをして巧さんは部屋から出て行った。
何処から出てきたこのお金……。
ていうか、そうだ、巧さんのベタベタ甘い雰囲気に流されかけてたけど俺は巧さんに借金をしているんだった……!!
巧さんがやたら甘い雰囲気を出してくるからって、いくらなんでもお金のことを忘れていたって……ア、アホじゃん、俺……!
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