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第17話
「おはようございます」
疲れていたのか、スマートフォンを握りしめながら寝落ちしてしまい、起きたのは出勤する時間の一時間前。
急いでシャワーを浴びタクシーに乗って、何とか遅刻せずにお店に着いた。
「あっ、蒼くんおはよ〜」
……今日の店長、何かニヤニヤしてるんだけど! はっ! 店長は俺と巧さんの関係を知っているからか!
「……昨日は休んですみません」
平常心を保ちつつ話しかけるが、店長のニヤケ顔が気になってしょうがない。
「いーよいーよ。どうせ桐藤 のせいだし! でも昨日の営業、中々カオスでさ〜、蒼 くん休みにしたの後悔しちゃった……」
「そんなに大変だったんですね……すみません」
「ううん、気にしないで。てか蒼くんやるねー、桐藤もう蒼くんにメロメロじゃん?! 休みだって桐藤が蒼くん疲れてるから休ませろって脅してくるからさ〜」
「メロメロって……死語ですよ、店長」
そ、そうだったのか……! ん? でも休んだ日もずっとセックスしてたから結局疲労困憊なんだけど……。
「わー! 蒼くんがオレをおじさん扱いする! やめて〜! オレがおじさんだったら桐藤もおじさんだからね?」
「え、店長と巧さん同い年なんですか?」
「食いつくのそこなんだ? そーだよ、オレと桐藤今年で三十一歳!」
三十一……俺が三十一歳になっても、あんな色気は出ないだろうなぁ……。
「いやでもホント良かった! また今日から頑張ろう! よろしくね、蒼くん!」
「はい、よろしくお願いします」
店長に挨拶を終え更衣室に入ると、後輩の洸 が俺に駆け寄ってきた。
「あー! 蒼さーん!! もう体調治りましたっ?!」
「ちょ、声でかっ……」
「あ、ついつい。ごめんなさい!」
そうか、体調不良で休んでることになっていたのか。
間違いじゃない、確かに体調不良だった。あらぬ所が痛かったし……。
でも、ずっと巧さんとセックスしてたから、こんな風に真っ直ぐに心配されるとちょっと心苦しい。
「こちらこそ、心配かけてごめん」
「いえいえ! 元気になって良かったです! もー、昨日マジ大変で……俺やらかしちゃったんスよ〜!」
そこから、今にも泣き出しそうな顔をした洸のマシンガントークが始まった。
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