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第18話
どうやら昨日は、この店のナンバーワン、渚 さんのエースと最近大金を使うようになった太客が被ったらしく、バチバチにやり合ったらしい。
この二人は渚さんが好きすぎるが故に独占欲が強くて、被るとヘルプのホストはそれはもう大変だ。
太客の姫がシャンパンを入れ「渚くん、だ〜いすきだよ♡ いつもありがとう♡ 今日アフター何処にいく?」とマイクで言えば、すかさずエースがオールコールをして「渚の一番は、一番お金使う私です♡ よいちょ♡」とお互いを煽りあって、シャンパンを入れてより長く渚さんを自分の卓にいてもらうとする。
「昨日は蒼さんもいないから、エースの人が凄まじくて……」
「あ〜……」
何処がツボに入ったかはわからないけど、渚さんのエースからは蒼のヘルプが一番安定してる〜! と褒めていただいた。
「俺、シャンパン直瓶させられて、トイレで吐いてたら渚さんが気付いてくれて……ヘルプについてくれてる子にそういう飲ませ方すんなって言ってるだろ、って渚さんが怒って姫返しちゃって……」
「あぁ……渚さんの優しさは嬉しいけど、心苦しくなるパターン……」
「そーなんですよー!! 俺、昨日はその席着く前にも散々飲まされてて、そこからのシャンパン一気だったんでもう我慢出来なくて……俺のせいでエースが切れちゃったらどうしよう……」
この世の終わりみたいな顔をして洸が言う。
「あんま無責任なこと言うのも良くないけど、大丈夫だと思うよ?」
ヘルプ指名されてる分、エースの姫とそれなりに仲良くさせてもらっている。
渚さんのエースは、ちょっと怒りっぽいけど怒りが持続しないタイプだからこれぐらいの事はもう気にしてないだろう。
「うぅ、俺、ほんとホスト向いてないかも……」
「出た! 洸のホスト向いてないかも〜。大丈夫だって! ちゃんと洸指名してくれるお客さんいるし、送り指名も今月増えたでしょ? 頑張ってるじゃん。ほら、時間だから掃除しに行くよ!」
しょんぼりと項垂れる洸の背中を押して、更衣室を後にした。
あぁ……、巧さんに無事出勤しましたって連絡しようとしたのに出来なかったし、どちらかと言えば、四年もホストとして働いてて、無理してタワーした挙句掛けを飛ばれた俺の方がホストに向いてない。悲しい現実に俺も項垂れたくなった。
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