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第21話

「お待たせ、葵くん」  ホテルの前に一台の車が止まる。車内から颯爽と降りてきた巧さんは今日もスリーピースのスーツをきっちりと着こなしていて、イケメンに拍車を掛けていた。出来る男感が半端ない。  まあ、車の運転手の方が明らかにカタギではないんだけど……。  巧さんに身惚れていたが、運転手さんを見て冷静になった。いや、ていうかイケメンだからって何で巧さんに身惚れてるんだ、俺!!  ご飯か買い物に、と連絡を貰ったがまず買い物は除外した。この間の買い物分、借金に追加しておいたよ〜なんて言われたら目も当てられない。  残るは食事だけど、巧さんにお店を任したらとんでもなく敷居の高いお店に連れて行かれそうで尻込みした。緊張して味がわからなくなる……。  かといって普段俺が行くような安いチェーン店に連れて行くわけにはいかないし……不安になっていた俺はあろうことか 『ホテルが良いです』  と、送っていた。  バカなの?! 最終的にやる事やるんだけどさぁ……あまりに即物的で、情緒が無い返信だった。  巧さんがどう思ったのかはメッセージの文面ではわからないけれど、『この間のホテルにしようか』と返信が来たので今日は入念に身体を洗ってからここに来た。 「お久しぶりです、巧さん」 「待たせてごめんね。行こうか」  自然に肩を抱かれ、俺一人では絶対に泊まることがないようなホテルに入っていく。  ……恥ずかしいです、巧さん。なんだか周りの視線が痛かった。

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