22 / 92
第22話
部屋に入ると、巧さんが痛いぐらいに抱き締めてくる。
「た、巧さん……?」
「ねぇ葵くん、やっぱこんなおじさんと一緒に外歩くの嫌?」
「おじさん……?」
誰が……? えっ、巧さんのこと……?
「若い子からしたらアラサーなんておじさんだから一緒に外歩きたくないですよって言われた……」
「誰にっ?!」
良くそんなこと言える人がいたな。巧さんはヤクザの若頭補佐だぞ! 若頭補佐が何か知らないけど!
「もちろん葵くんとセックスもしたいけど、葵くんの事もっと知りたいからデートもしたい……」
「で、でーと……」
さっきから巧さんの言う言葉が衝撃的すぎておうむ返しになってしまう。
デートって……デート……? 俺のこと、知りたいの……?
「葵くんは俺とデートするのヤダ?」
「い、嫌じゃないですっ!!」
「じゃあ何でホテルが良いって言った?」
「それは……」
沈黙が痛い。巧さんの厳しい目線をひしひしと感じる。
「……やっぱ俺と外歩くの嫌なんだ?」
「ち、違います!! あのですね……」
「うん、なぁに?」
「え〜っと……」
目線の厳しさも相まって、ものすごく言いづらい。買い物行って借金が増えるのも、ご飯行って恥をかくのも嫌だったんですなんて……!
「実は……」
「うん」
「……俺、巧さんに借金してる身だから、買い物行っても見るだけだし、ご飯も、マナーとかよくわからないから恥ずかしくて……」
「それだけ?」
勇気を出して言ったのに、それだけ? とは……えぇ〜……小さな声ではい、と返事をした。
ともだちにシェアしよう!