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第32話

「まりあちゃん、久しぶり」 「蒼ー、久しぶり! ていうか聞いてよ! ハルくんったら酷いんだよー!!」  ハルさんはまりあちゃんの本担で、まりあちゃんはハルくんのエースらしい。  サブ担の俺は、本担ほどお金を使ってもらえないけれど、姫が少ない俺にとってはコンスタントに来店して頂けるだけで(まりあちゃんとハルさんは良く喧嘩をする)有難い。 「ハルさんがどうかしたの?」 「もー、酷いんだよ! 最近まりあと同じくらい使う客がいてね」  ぷりぷりと怒りながらまりあちゃんが話し始める。 「その日一緒にアフター行く予定だったのに、ソイツが結構使って……、ソイツとアフター行かなくちゃ行けなくなったって言ってまりあのこと朝まで待たせたんだよ?! 信じられない!!」 「そうなんだ……」 「酷いよね?! 私がその日使わなかったのだって、来月ハルくんのバースデーでタワーして欲しいって言うからセーブしてるだけなのに!」  ちなみにチラッと聞いた話では、高額ボトルでタワーをする予定だからボトル代だけで小計600万円とか言っていた。  うっ、俺のトラウマが……。 「ハルさん、まりあちゃんのこと信頼しているから甘えちゃったのかもね」 「……そう?」 「うん、ハルさんもまりあちゃんの優しさに甘えちゃったのかも。まりあちゃんはやさしいから。でも、甘えっぱなしはダメだよね」 「! そーなの! ハルくんっていつも私に甘えてくるんだよね! まりあが一番好きだから、まりあに頼っちゃうって!」 「やっぱり、そんな感じする!」 「でしょでしょ! ハルくんと何回も別れようとするけど、やっぱり私ハルくんのこと好きで……」 「うんうん」  最初の怒った顔はもう出てこなくて、まりあちゃんが嬉しそうに笑う。 「ハルくんのお店行く時は何着て行こうって悩んじゃうし、ハルくんと離れてるだけで今何してるかな? って気になるし、連絡ないと不安だし、やっぱりハルくんと一緒にいると楽しいし……」  ん? まりあちゃんの話を聞いてて何か引っかかった。 「……ハルさんのこと、ほんとに好きなんだね」  そうだ、世間一般ではこんな風に考えるのは相手のことが好きだから。  俺、こんな感情ついさっき思わなかったっけ……? 「そーなの! ハルくんのこと大好き!」  まりあちゃんの満面の笑みを見て、俺にも衝撃が走る。  ……もしかして俺、巧さんのこと好き……だったりする?!

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