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第33話

 まりあちゃんは、ハルさんの話をしていたら会いたくなってきたらしく、一時間ほどで帰っていった。  正直、ちゃんと送り出し出来たのか覚えていない。  せっかくお店に来てくれたのに、巧さんのことで頭いっぱいになっちゃって仕事出来ないなんて、キャスト失格だ。  お礼のメッセージをまりあちゃんに送ったけれどハルさんのお店についたのか、ぼやっとしている俺を不審に思ったのか、既読はまだついていない。  さらに厄介な事に、一度好き? かも……って思ってしまった単純な俺の頭は、余計たくみさんを意識してしまう。  最初からカッコいい人だと思っていた。ヤクザって聞いて怖かったけれど、俺の前だとそんな風に振る舞わないし……聞いても楽しくないような話をしても、優しく聞いてくれるし……。  うそ〜……自分は異性愛者だと思っていたけど、この際それはどうでもいい。  巧さんが男の人だろうが女の人だろうが、そもそも俺は債務者だし、手っ取り早くセックス出来るから巧さんは会ってくれるだけで……!  買い物とか、食事もデートといって揶揄いながら若い子を可愛がるのが好きなタイプなんだろうし……! 俺以外にもそういう相手がたくさんいるだろうし……! 嫌だな、そんなこと思う資格はないのに。  巧さんもただペットみたいに可愛がっていた男に、急に本気で好き好き言われても困るよ……、ていうか何自然に巧さんに気持ちを伝えようとしてるんだ俺はっ!!    「はぁ……」  堪えきれなかったため息が出た。

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