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第34話

『スーツが出来たみたいだから取りに行こう。いつ空いてる?』  巧さんからのメッセージにいつもならすぐ返信をしていたが、何て返信したらいいのか急にわからなくなる。  だって、どんな顔をして会えばいい……?!  きっと今巧さんと会ったら好き好きオーラ全開になる……そんなの巧さんが困るだろうし。  ていうか今までも無意識でそんな態度していないだろうな、俺……。  だけど、予定を先延ばしにするのも寂しくて嫌だ。  スマートフォンの前で百面相しながらやっとの思いで返信した。  大丈夫、きっと何とかなる。 「葵くん、久しぶり」  今日もスーツをきっちりと着込んだ巧さんがはにかみながら挨拶をしてくれる。  顔が緩まないようぐっと力を込めてから返事をした。  俺、自覚した途端こんなわかりやすくなるの……?  全然大丈夫じゃないんだけど……!  内心ひやひやしつつ、お店に向かい巧さんが買ってくれたオーダーメイドのスーツを試着する。  いつもよりちょっとカッコよく見える……? 馬子にも衣装だなぁ。 「……巧さん、どうですか?」 「うん、似合ってるよ。かっこいいね。着心地はどう?」 「ありがとうございます。めちゃくちゃ良いです!」 「良かった。じゃあ一回スラックス脱ごうか、葵くん」 「……えっ?!」  巧さんの言葉に目を丸くする。ここ、試着室ですけど! そんな、脱ぐなんて……! 「あはは、エロいこと想像した?」  巧さんが耐えきれないように笑う。  ど、どういうこと……?! 「え、違うんですか?!」 「流石に此処ではしないかなぁ」  そりゃそうだけど……! そんな急にスラックス脱げなんて言われたら、エロい事想像しちゃうよ……!

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