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第37話

 店を出てタクシーに乗り込み、行き先を告げる。  しかし、巧さんの口から出てきた目的地はレストランだった。  ……正直、食事よりも俺を優先して欲しい。  だって、俺をこんなのにしたのは巧さんなのに。 「なぁに、葵くん」  俺の恨みがましい視線を感じ取ったのか、じっと見つめられる。絶対察してるのに、あくまで知らん振りする巧さんに、内緒話をするように距離を近付けた。 「巧さん、ホテルいきたい……」  耳たぶに唇が触れるか触れないかの距離で、ぼそぼそと喋る。  運転手さんに聞こえないように声量は落としたのに、こんなにぴったりくっついたら意味がない。  だって、好きな人に触られたら勃っちゃうし、もっと触って欲しい。  巧さんに仕込まれた身体は、触られるのを、内側を暴かれるのを今か今かと待ちわびている。 「お腹空いてない?」  巧さんの掌が太ももに置かれる。巧さんに触られたところが、ひどく熱い。 「空いてないです……いじわるしないで、たくみさん」  想像以上に拗ねた声を出してしまった。  太ももに置かれている掌に、俺の指を絡め、今度は俺がじっと見つめる。もうこれ以上我慢したくない。 「今日は随分甘えただね、葵くん。可愛いから、逆に意地悪したくなる」 「えぇ……、やめてください……」 「今日はやめようかな。運転手さん、行き先変更しても?」  握った手は、離さないでいた。

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