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第43話

 とうとう巧さんがお店行くね、と言っていた日になった。  巧さんからメッセージは来るけど、本当に来店するのかは未だに半信半疑。    いやいや、来ないでしょ。うん、来ない。期待するな、俺!   ……と思いつつ、しっかりと巧さんが買ってくれたスーツを着た。  グレンチェックのスリーピーススーツは、俺の身体に合わせて作られているから着心地が良い。  だけど、このスーツを見る度に巧さんにぐちゃぐちゃにされた記憶が蘇ってきて、袖を通すのに時間がかかった。恥ずかしい……。 「あれ? 蒼くんスーツなんて珍しーじゃん」  出勤すると、さっそく店長に声を掛けられる。  ……店長には言っておいた方がいいのかな。 「あの店長、今日巧さんが来るかもって……」 「ぶっ!! それマジ?!」  店長が大笑いする。 「ヤバ、ちょ〜面白いじゃん。オレ絶対ヘルプつこ」 「ヘルプNGって言ってました」 「え〜? そんなこと言ってたの? 余計面白いんだけど!」  店長は基本キャッシャーにいるから席にはつかない。   ただ例外があって、店長の知り合いが来た時や、店に大金を使う姫が店長と話したいと希望した時だけ席につく。  そんな店長が席に着いたら、絶対悪目立ちする……! 「まだ来るか決まった訳ではないので……! では!」  面白がる店長の視線に耐えかねて、そそくさとその場を離れた。  店がオープンして二時間。まだ巧さんは来ていない。  まあそうだよね……なんでわざわざ俺を指名して来るんだよって話だし……。  期待しないようにしていたけど、巧さんと会えるかもしれないとちょっと浮かれていた心が急激に冷めてくる。  不貞腐れながらバックヤードで待機していると、内勤さんが俺を呼んだ。 「蒼、指名来たよ〜、見たことない男の人」 「! すぐ行きます!」  内勤さんの後をついて行くと、キャッシャーで店長と巧さんが会話しているのが見えた。  嘘、ほんとに来てくれた……! ていうか巧さんかっこよすぎてお客様に見えない!   「巧さん!」 「おっ、葵くん。来ちゃった」 「嬉しいです……、ほんとに来てくれるなんて」  巧さんの側に寄ると腰に手を回される。 「桐藤、オレは蒼くんの特別アピールやめろ。マジ腹捩れるから! 店にいる時は源氏名で呼べ、おさわり禁止」  「うるさいなー、ここの店。そして店長の質が悪い。あっ、そこのキミ、席案内して。」 「すみません、すぐ案内しますね。蒼、VIPルームの一番案内して」 「はい、いらっしゃいませー!!」  大きな声で言うと、その声につられて店にいるホストが同じように声を上げる。  誰かの指名が来たのかと確認すると、巧さんの姿を見てみんなポカンとしていた。  巧さん、かっこいいよね! そうなるよね! と何故か俺が誇らしげになった。

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