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第46話

 VIPルームの扉が開き、内勤さんがシャンパンクーラーに入れられたアルマンドゴールドを持ってくる。  よ、良かった……シルバーじゃなかった……。いや、良くないけど! 「あれ? 色がちが」  言い切る前に巧さんの口を両手で塞ぐ。 「? 大丈夫ですか?」 「はいっ、大丈夫です! 何でもないです!」  内勤さんがVIPルームの扉を開けて一旦下がると、慌てて巧さんの口から手を離す。咄嗟のこととはいえ、何て失礼なことを……! 「ごめんなさい、巧さん……」 「ふふ、もうちょっと色気のある塞ぎ方してよ」 「なんですかそれ」 「やってあげようか?」  巧さんの顔が近づいてくる。暗い照明の中でも、巧さんの瞳はキラキラと輝いている気がした。  もう少しで唇が触れそうになるぐらい近づいてきて、ふと我に帰る。  いや! 扉開いてるし! 開いてなくてもダメだし!! 「ふふ、残念」 「もう、何考えてるんですか巧さん……!」  俺を揶揄って、巧さんはご機嫌だ。  店内の照明が落とされると、オールコール用の音楽が流れる。   「いーよいしょ! 従業員! オールで一卓集合!」 「いーよしいしょ!」  マイクを片手に現れたのはナンバーワンの渚さんだった。嘘ぉ、マジか!!  渚さんは流石ナンバーワンだけあってシャンパンコールをするのが上手いけど、ナンバーワンが故に自分がコールされる側にいる事が圧倒的に多い。  うちの店は、メインのマイクコールをするホストはお客様を呼べてないホストから選ぶことが多いので、コールする側になっても毎日姫が来店する渚さんがマイクを握ることはほぼない。(そして俺はよくメインでマイクコールをしている。泣いてないぞ!)  そんな渚さんがメインでマイクコールをする=太客や機嫌を損ねたくないお客様という暗黙の了解みたいなのがあるのでみんな一段と気合が入る。いや、みんないつも頑張ってるんだけどね……!  従業員、クビになったら困るもんね……。  サブでマイクを握っているのは、後輩の中でも懐かれている洸だった。 「今メインでコールしてるの、ナンバーワンの方ですよ。巧さんが店長びっくりさせるから」 「そうなの?」  小声で巧さんに話しかけると、耳元で返されてドキドキしてしまう。いや、コール中だし! 平常心、平常心……。 「はい。サブは後輩です、仲良いんですよ」 「へぇ…………、嫉妬しちゃうな」  冗談でも嫉妬したなんて言われて、俺はちょっと嬉しくなった。

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