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第47話

「素敵な、素敵な! シャンパン、シャンパン! かましてくれた! 素敵な王子と! 素敵な王子!」 「なーんとなんと!」 「こちら! なんと素敵な! アルマンドゴールドいただきました!」 「ありがとうございます!!」 「全員集合! 素敵な王子! 一言ちょうだい!」 「3、2、1!」  巧さんと内緒話をしているうちにコールが進み、巧さんの手にマイクが渡る。  な、何て言うんだろう巧さん……。 「蒼くん、これからもよろしくね?」 「「いーよいしょ!」」 「素敵な! 一言! 頂戴した! 王子も一言! 頂戴頂戴!」 「3、2、1!」  な、なんだ……めっちゃ無難な事を言う巧さん少しだけしょんぼりしてしまう。  ノリで好きだよ、なんて冗談でも言ってもらえるかも! なんて一瞬でも思った自分が滑稽だ。  無意識のうちにマイクを手に取り、口を開く。 「巧さん大好きです」  フロアが静まり返る。  アッー!! やってしまった!!!!  名前出すのもアホだし今の大好きですってガチっぽくかった?! いやガチなんだけど!! こんな所で言うつもりはなかったって言うか……!!  俺のアホー!! 何一人で大好き何て言って盛り上がってるんだ!!!  ごめんなさい巧さん!! 巧さんの顔が怖くて見れない。 「「……よいしょー!」」 「かわいい! 一言! 頂戴した! 王子も! 言った王子も! グラスを持って〜! 乾杯!」  シャンパンが注がれたグラスを手に持ち、巧さんの持つグラスとカチリと合わせる。  巧さんの顔をおずおずと伺うと、ニヤニヤと笑っていた。 「いやー、シャンパン入れると葵くんから可愛い大好きが聞けるなんて俺ハマっちゃうかもな」 「な、何言ってるんですか巧さん! あの、名前言ってすみませんでした」 「気にしないで、巧なんて名前腐るほどいるから」  そんな媚びるようには言ってはいないが、冗談と思われたことにほっとしたらいいのか、残念に思ったら良いのかわからなくて、グラスの中身をあおった。  でも名前のことも怒っていなかくて良かった ……。もう巧さんがお店に来ることはないだろうけど、気をつけよう……!

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