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第49話
駐車場まで急いで走ったけれど、そういえばどの車か聞くのを忘れていた。しまった!
どうしよう……。
とりあえず駐車場をうろうろしていると、前巧さんが乗ってきたワゴンタイプの車を見つける。運転席に座っている人もどうみてもカタギじゃない。……前も見たぞこの人。
明らかにカタギじゃない人が俺に気付いて、車のドアを開けてくれ、そのまま精算機の方へ走っていった。
「ありがとうございます」
「いえいえ」
「あ、葵くん。お疲れ様」
車内には、くつろいでいる様子の巧さんが居た。
「ありがとうございます、お邪魔します」
良かった、間違ってなかった!
ほっとして、車内に乗りこみ巧さんの隣のシートに座る。ふかふかで気持ちいい。
「はじめて客としてホストクラブに行ったよ。みんな頑張ってるね」
「そうなんです!」
良かった……、とりあえずこれで巧さんからのクビ発言はでてこないだろう。
「巧さん、来てくれてありがとうございました、シャンパンも……」
「いいよ。スーツ姿もまた見れたし、大好きなんて言ってもらえたし?」
「た、たくみさん……!」
揶揄われて、顔が真っ赤になる。なんであの時言っちゃったんだよ俺!!
「葵くんって結構大胆だよね」
ニヤニヤしながら頬をつついてくるので、うー、と唸ってしまう。
もう、恥ずかしい! 冗談にしか思われてないこともツライ!
下を向くが、それでも巧さんは楽しそうに頬をうりうりと指で押してくる。
いつの間にかカタギじゃない方が戻ってきて、車がゆったりと発進していた。
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