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第53話
「……あれ? 俺、まともに取り合われてなくない?」
その事実に気が付いたのは、能天気なことに帰宅してからだった。
朝、セックスしすぎであちこちボロボロの俺を家まで送ってくれた。もうひと眠りするために布団に入ったけれど、中々寝付けなくて昨日の事を思い出す。
昨日は巧さんがお店に来てくれて、コール中勢い余って大好きなんて言っちゃって、その後セックスしてる時も好き好きなんて言ったはいいけど、巧さんは返事をくれるどころか、たぶん真に受けていない。
……まじか〜! 俺だけ盛り上がって好き好き大好きなんて言ってたのか!!
やばい、ちょー恥ずかしい、イタイ奴じゃん俺っ!!
いやむしろセックスを盛り上げるスパイス的な感じで使われた感があるのが虚しい。
今すぐ部屋中を転がり回りたい気持ちに駆られるが、あいにく部屋が狭くて転がるスペースはなかった。
「悔しいな……」
好きって言って断られるならまだ良い。(いや、全然良くないけど!)
だけど最初からあしらわれるのは問題外だ。
そもそも俺と巧さんの関係の前提が、金で買われているのが問題だし……。
巧さんからしたら俺は売り専のボーイと変わらないからこそ、まともに取り合ってくれないのかもしれない。
このままじゃダメだよなぁ、やっぱり。
そもそも巧さんと会えるのがあと十回分の金額しか残っていないはずだ。
このままあと十回会ったら会えなくなるなんて、絶対に嫌だ。
……よし! 巧さんにした208万円分の借金を返して、ちゃんと巧さんに好きって伝えよう。
恋人同士になれると良いな、なれなくてもセフレとして使ってくれたら……!
お金返すのも、巧さんに好きって言ってもらうのも頑張ろう!
巧さんとこれからも一緒に居れるように。
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