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第60話 ※桐藤巧視点

 事務所に着いてから、とにかく早く葵くんの護衛を選び、絶対葵くんにバレないようしろと釘をさしてから急いで店に向かわせた。  葵くんの位置情報を確認して、店から動いていないことに安心する。  あとは松平の件だけだ。悩んでいると勘太から声が掛かった。 「アニキ、コーヒー飲みます?」 「貰おうかな」 「はい! お待ち下さいっス」  めんどくさいという理由でインスタントコーヒーしかない事務所だから、すぐに勘太が俺と自分の分のカップを持ってくる。 「今日何かあったんスか?」 「あぁ、松平に葵くんのことがバレて脅されたよ」 「はぁ〜?! つくづく卑怯なヤツっスね!」 「そう。卑怯だし……組長(オヤジ)が嫌いなやり方だ」  勘太の唾を飲む音が、やけに大きく聞こえた。   「でも葵くんに迷惑かけないのが最優先なんだよね」 「了解っス。どうするんスか?」 「うん、ここに偶然松平たちのスケジュールがあるんだけどね」 「? はい」 「もし、これがバレたら俺が殺されるかもだけど……」 「どういうことですか?」  勘太は俺が半グレの時から懐いてくれている。  半グレ時代、八神組のシマと知らずに好き勝手にやっていたら、八神組の人間に〆られた。俺も勘太も、今はホストクラブで店長をやっている小鳥遊(たかなし)もその他仲間も仲良く病院送りだ。  でも、その時に組長(オヤジ)が目が気に入ったとかの気紛れで俺を拾ってくれた。それについてきたのが勘太。  小鳥遊は怖いから俺はホストになって一攫千金を目指す! なんて言って夜の街に消えた。すぐ再会することになったが。  半グレで好き勝手やっていた俺からしたらヤクザなんて窮屈だし古臭い考えをもってる頑固なジジイも相手にしなきゃいけないし、理不尽にだって黙って耐えなきゃいけないしで相当ストレスが溜まった。  だけど、組長(オヤジ)の人を惹きつけるオーラにただただ圧倒された俺は今日まで組にとっての最善を尽くしてきた。  俺を信じてついて来てくれた勘太は、どこまでついて来てくれるんだろうか。  松平からウザいのは前からだし、何かあったら揺すろうと思っていたからネタはある。  このタイミングでカードを出すのは、単に葵くんに迷惑をかけて嫌われたくないからだ。  葵くんをこんなことで手放したくない。  だけど、現に危険な目にあわせいる俺じゃダメだろうな……。  葵くんは関係ないのに、俺が勝手に熱を上げて、それがバレて利用しようとされているなんて良い迷惑だろう。  静かな事務所で、俺は声を潜めて続きを話す。 「コイツ等、今だに美人局とか、恫喝して金稼いでるんだよね。普段は下っ端にさせているけど、金が足りない月は松平自身もしているんだよ」 「そうなんですね」 「うん、そこに偶然警察が居たら大変だよね」

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