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第63話
写真を送った後、しばらくトーク画面と睨めっこをしていたけれど、既読にならないメッセージに俺はだんだん冷静になってくる。
何やってんだ……アホか……! こんな男の上半身裸の写真送られても困惑するわ!!
さっきまでの勢いは削がれて、恥ずかしいからメッセージを取り消そうと思った瞬間に既読が着く。
「え〜! タイミング!」
もう見られているだろうし、このままトーク画面を開いていると、巧さんがメッセージを返信してくれた時にすぐに既読が付いてしまう。
こんな写真送ってきて反応来るまで律儀に待ってたの(笑)なんて思われたら恥ずかしくて死ぬ。
急いでホームボタンを押すと、スマートフォンが震えた。巧さんからの着信だ。
やば、なに?! 直接文句言いたくなったとか?!
恐る恐る通話ボタンをタップする。
『葵くん?』
「はい、葵です。あの、巧さんっ」
『どうしたの、そんなに慌てて』
巧さんのクスクスという笑い声が耳に響くと、さっきまでの熱がぶり返すように身体が熱くなる。
「……すみません」
『葵くんは可愛いね。あんなエッチな写真送ってくるなんて、どうしたの?』
少し掠れたような巧さんの声が、腰に響く。
電話越しに聞くだけじゃ物足りない。俺は、会って話して、そして、触って欲しかった。
ビデオ通話に切り替えるボタンを押すと、巧さんも応答してくれて画面に殺風景な部屋を背景にした巧さんが映る。
久しぶりに見た巧さんに、画面越しだとしても顔が緩んでしまう。好きだ。
『葵くんの顔、赤いね。一人で遊んでた?』
その言葉に余計に顔が赤くなった。
「……わかってるくせに。巧さん、いじわる」
『えー? ほら、好きな子は虐めたいみたいな?』
冗談でも好きな子、とか言われると心臓が破裂しそうになるからやめてほしい……!
「小学生じゃないんですからっ」
ドキドキしすぎて、顔に出ないようにしようと思ったら、素っ気ない言い方になってしまった。
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