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第15話

「相変わらず貴史は良い体つきだね。お父さんにそっくりだけど、体つきは全然似てないなぁ」  温泉に浸かりながら親父はベタベタと貴史の体に触れる。 「会長、あまりそういう触り方は良くないですよ。下手をしたらセクハラになります」  グイッと貴史を引き寄せる。親父はいつもこんな風に貴史に絡んでるのか。俺が居ない事を良いことにして!  大体、叔父さんと親父は一体どう言う関係なんだ。ぶっちゃけ前から怪しいと思っていたんだ。 「ゴメンね貴史。と、言うか何かいつもと違うなぁ。どうしたんだい幸久。僕が貴史と話してると泥棒を見るような目で見てくるじゃないか〜」 「気の所為です」  変に絡んでる親父がうざったい。 「私はそんな風に思ったりしませんので、会長はお気になさらず」  貴史はそう言って俺の手をさりげ無く振り払う。  俺は更にムッとしてしまった。 「君、ほら逆上せてるんじゃないか? もう上がろう」 「社長、まだ温泉に浸かって5分も経ってませんよ」  もう上がってしまうと誘うが、流石にまだ早すぎか。  いや、にしてもセクシー過ぎないか君。  こんな大浴場に皆で入って良いような体じゃないぞ。歩く十八禁が服を脱いでたらもう何になるだ!? 「いやぁ〜社長も良い体をされてますよね。何かされてるんですか?」  空気の読めない親父の取り巻きが話しかけてくる。 「いえ、特には……」 「社長は筋トレオタクですね」  何故か俺の代わりに貴史が答えてくれる。 「そんなに言うほど筋トレしてないぞ」  普通だと思う。オタクと言うほどしてないぞ。ただセックスする時に体力が有った方が良いから少し鍛えてるだけだ。 「暇さえあれば腹筋したり、スクワットしたりしてるじゃないですか」 「そうだったかなぁ」  あまり意識してしていないかもしれない。 「オタクは自分をオタクとは思わないものだよね〜」  親父がアハハと笑っている。  お前に言われたくないわ! 親父の方が筋トレオタクだ。 「会長もそうですよね」  そう取り巻きにも言われている。 「さて、そろそろ上がろうかな」  もう5分ぐらい経っただろう。 「はい、私も上がりますね」  今度は貴史も十分だと思ってくれた様である。 「おい、タオルぐらい巻け」  タオルは持っているが、隠すでもなく普通に出ようとする貴史。なんでそう恥ずかしげもなく見せ付けるんだ。確かに良い体をしているから自信も有るんだろうが。 「男が何言ってるんですか、さっさと出ますよ」  隠してくれないので仕方なく俺のタオルを巻いてやった。  大浴場から出ると、冷房が入っているのか少し涼しさを感じ、気持ちよかった。  脱衣場には浴衣が用意されている。  あれ? 「俺達の服は!?」 「ホテル側が毎回洗濯してくれるんですよ」  凄い、致せり尽くせりだ。  貴史は俺に浴衣を着せてくれてから、自分も浴衣を纏う。  色っぽい。  ついつい見惚れてしまう。 「何をぼんやりしたいるんですか? 此方に座って下さい」  貴史に見惚れてぼんやりしてしまっていたらしい。手を引かれて椅子に座らせられる。ドライヤーで貴史が髪を乾かしてくれた。 「おや、貴史に髪を乾かしてもらっているのかい? まったく幸久は甘えん坊だね。僕も乾かして欲しいなぁ」  いつの間に上がったのか、親父が覗き込んでくる。 「山田さんにしてもらえば良いじゃないですか」  山田さんは親父の付き人だ。 「え〜僕も可愛くて美人な子にして欲しいな」 「ですから、そう言うのはセクハラになりますと……」 「私は別に構いませんよ。社長は終わりましたので、会長どうぞ」  えーー。  俺の髪を乾かし終えた貴史は、俺を退かして親父を椅子に座らせる。  そして俺にする様に髪を乾かし始めた。  何かいつもより早かった。適当にされた気がする。 「あー、気持ちいいねぇ。有難う貴史〜」  嬉しそうな親父。ムカつく!! 「貴史だって髪を乾かさなければならないだろ!」  人の髪を乾かして自分が風邪を引いたら何にもならない。 「私は後で構いません」  シレッと言って此方も見ない貴史。君は一体誰の秘書なんだ。他でもない俺だろ!?  俺の言う事を聞けよ! 「仕方ないな」 「えっ、ちょっと社長!」 「君に風邪を引かれたら俺が困る」  隣の席からドライヤーを引っ張り、貴史の髪を乾かす。 「わぁ、ちょっと止めて下さい髪型崩れる」  此方に抵抗しつつ、親父の髪は綺麗に乾かず貴史。  親父は「仲良しで羨ましいな〜」なんて呑気に笑っていた。 「最悪ですよ」  髪を乾かしてあげた貴史は少し不機嫌になってしまった。 「ごめんなさい」  ちょっと乱暴にしてしまった様だ。ドライヤーはいつも貴史がしてくれるから、使い慣れていなかった。  でも別に何時もと変わらない髪型に整っている。まぁ、貴史が自分で髪を整えだのだが。 「あ、皆さんお帰りなさいませ」  部屋に戻ると橋田くんが出迎えてくれた。 「おや、君は入らなかったんだな」  そう、声をかける。そう言えば居なかった。 「変装を取りたく無いんですよね〜」  小声で理由を教えてくれる。  何故、そんな変装をしているのか。 「さぁ、皆、今日もお疲れ様。乾杯しよう!」  テーブルに着いた親父が陽気な声を上げる。  本当に酒を呑むのが好きな人だ。  全員テーブルに座り、拍手する。 「乾杯!」  と、親父が音頭を取ると飲み会が始まった。   俺を挟んで橋田くんと貴史が座る。  橋田くんの隣が親父で、その隣は山田さんだ。 「橋田くん、今日は有難うね。さぁ僕の金で食べる料理を楽しんでくれ」   親父がそう橋田くんに声をかける。  橋田くんは苦笑しつつ「頂きます」と、手を合わせた。  テーブルには刺し身や肉、果物まで綺麗に並べられている。 「食べたい物があったら好きに頼んでね」  食べ放題だよ。と、親父は豪快に笑いつつ、酒を呑んでいた。気ままな隠居生活を謳歌している様で何よりだ。 「社長、お酒には気をつけてくださいね。直ぐに酔ってしまうんですか」  そう小声で貴史に注意される。解ってはいるが、社員の集まる前で社長である自分がサワー等を呑むのもどうかと思う。 「大丈夫、気をつけるよ」  と、小声で返事しつつ日本酒に口を付けた。 「おお、社長もイケる口ですな」  ハハハと笑い、空いたコップに日本酒が注がれてしまう。  しまった。親父がザルだから強いと思われた。空けるとコップに注ぎに来られる。  だがチョビチョビ呑むのも……  どうしよう。  貴史を見れば、溜息を吐かれてしまった。 「私が呑みましょう」 「おい……」  人目が無い時を狙い、俺のコップと自分のコップを入れ替える貴史。  貴史だってそんなに酒が強い訳では無いのに……  だが、貴史のコップにまた注ぎに来てしまう親父の取り巻き。  一言二言、世間話しを交わしつつ、余計な事をするな〜と、ハラハラしていた。 「僕も手伝います」  気を利かせてくれた橋田くんが、自分のコップを入れ替えてくれる。  本当に申し訳ない。 「僕、結構強い方ですから、貴史さんにも無理をしないようにと」  そう、耳打ちしてくれる橋田くん。  伝言ゲームの様だ。  貴史に伝えると、何故かムッとした表情をし、酒を奪って行く。  いつの間にか俺を挟んで、俺に注がれた酒で貴史と橋田くんが飲み比べるような構図が出来上がってしまっていた。  宴もたけなわになり、各々料理と酒を楽しんみ、此方に気を使わなくなった頃には、貴史がダウンしてしまった。 「すみません。少し、席を外します」  そう言って席を立った貴史は具合が悪そうだ。 「大丈夫か?」  一緒に立ち上がろうとすると、手で制されてしまう。 「一人で大丈夫ですので、お気になさらず」  貴史はそう言うが、心配だ。  少しフラついている気もする。 「僕が付き添います」  橋田くんが立ち上がり、貴史を追いかけて行く。  橋田くんが付き添うなら大丈夫か。  自分で言うだけ有って、あれだけ呑んでもまるでシラフの様な面持ちである。  二人の後ろ姿を見送った。  親父は自分の取り巻き達と盛り上がっており、もう出来上がって寝ている者もいる。俺は残りの料理を掻い摘みつつ、烏龍茶を呑んでいた。  少しずつ酔もさめてくる。  それにしても貴史と橋田くんは遅くないだろうか……  ちょっと待てよ橋田くんなら大丈夫だとは思ったが、橋田くんは滅茶苦茶手の早いタチだ。  酔った貴史は色気ムンムンだろうし、もしや手なんて出してないよな?  いや、相手はあの貴史だぞ。  柔道も剣道も、空手だって段持ちだ。  何か有ったら自分で抵抗して投げ飛ばすなり……  流石に酔っていたら出来ないかも。  貴史も橋田くんを割と気に入ってる節があるし、今度また3人でしようと言っていたし……  ヤバイ。  貴史の本気の処女アナルが橋田くんによって奪われてるかもしれない!  それは駄目だ。  いくら橋田くんと言えど貴史の処女アナルは譲れない。  もし貴史に何かしてたら俺はとてもじゃないが橋田くんを許せそうにないぞ。  何も無い事を祈りつつ、そっと自分もその場を離れた。

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