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第27話 秘書は困っている
朝、どういう態度で接したら良いのか解らず、少し冷たくしてしまったかもしれない。
幸久の顔もまともに見られなかった。
セフレでも朝目覚めたらおはようのキスをするものなのだろうか。
何だか恋人同士になった様な錯覚に陥る。
ただのセフレにして貰っただけなのに烏滸がましい。
幸久に全て任せると約束したが、やはり全部任せるのは心苦しく、俺は合間を見て『初心者 アナル拡張 やり方』で検索したりした。上手く出来なくて煩わしいと思わせたく無かったのである。
ふむふむ、なになに。アナルプラグを入れっぱなしにしよう?
無理だ。仕事にならない。
裕太に相談しようかな。
連絡先は貰った名刺を見れば解る筈だが……
「貴史、この資料は……」
「ひえっ! あ、それは…… じゃなくて! 職場で名前を呼ぶのは止めて下さい!」
変な事を検索している時に声を掛けられ変な声が出てしまった。恥ずかしい。
「別にいいだろ? 誰も見てない」
幸久も変な顔をしてる。怪しまれた。
「そう言う問題じゃありません。職場とプライベートは分けるべきでしょ!」
なんて注意しつつ職場でアナル拡張の方法について検索していたのは誰だ。
「解ったよ。天野、この資料……」
「はい、その資料の新しい物が欲しいのですね。出しました」
「君は話が早いのか遅いのか解らないな」
幸久が求めているだろう資料を出して見せる。苦笑されてしまった。
「有難う。助かるよ」
「お茶でも淹れてきます」
俺は幸久の笑顔にドキッとしてしまい、お茶を入れに出ようとした。
「ん? 天野さん。ここでアナル拡張について検索するのは止めろよ?」
「あわわわ!! すみません」
職場のパソコンで検索してしまった上、何も考えずにそのまま資料を出して見せてしまった事に気づく、検索画面も消してないと言う、有り得ないミスだ。最悪である。
「それで? 試して見る?」
「試してみる?」
「アナルプラグ入れっぱなしにしてみる?」
「け、結構です!!」
ニヤリと笑っている幸久に、血の気が引く。逃げる様に部屋を出て給湯室に向かった。
正直、幸久が何を考えているのか良く解らない。
どうしたら良いのかも解らない。
『貴史を抱いて良いのは俺だけだ』と言われた。俺だって他の人になんて抱かれたく無い。だけど幸久は沢山の男を誘って抱かれているのに、俺は幸久だけだなんて……
だったら幸久も男だけでも良い、抱くのは俺だけだと約束して欲しかった。
我儘だよな。
ただのセフレが重いと思わせてしまいそうだ。
ハァーと、溜息が漏れる。
セフレなんて作った事は無いし、よく解らないが、自分が抱く側なら出来ると思った。実際ままならなかったけど、抱かれる側を求められるとは本当に考えた事も無くて、ちゃんと出来るのか不安しかない。
正直に言えば怖い。
あの、玩具をお尻に入れられるの怖い。
知らない快感に襲われて連続でイカされて、登り詰めた快感から下りられなくなるのは恐怖だ。
あんな玩具でこんなになっているのだ。本当に幸久のモノを受け入れる事が出来るのだろうか。
幸久と二人でするのが恐くなってしまった。
側に裕太が居たら安心するのに。
裕太だったら幸久を満足さけてあげられるし、俺が怖がったら幸久を止めてくれそうだ。前に助けてくれたみたいに。
セフレの事も教えてくれそうだし。
何処の知らない奴ではない。
幸久も裕太の事は気に入っているし、裕太になら任せられる。
やっぱり、裕太に相談してみよう。
俺はそうと決めると、お茶を持って社長室に戻るのだった。
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