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第29話 押しかけ社長
仕事を定時に終わらせ、貴史と一緒に帰ろうと誘ったが何故か断られた。
俺が貴史の予定を把握出来てない訳が無い。
今、付き合ってる女性も居なかった筈である。
俺を差し置いてまで何処に行こうとしているのか気になった。
「何の用事が有るんだ?」
「私用です」
「デート?」
「違います」
「じゃあ誰と会うの?」
質問攻めにし、貴史を角まで追い詰める。
大抵、ここまで質問したら隠さず用事を言ってくれるのだが、何故か黙ってしまう。
「俺には言えない奴と会うのか?」
後ろめたい事がある証拠だ。昨日あんなに可愛がったのにもう浮気する気なのか?
「約束していて……」
「だから誰と?」
「それは……」
何故言えないんだ。
「貴史は俺とアナル拡張する用事があるよな?」
「今日もするんですか?」
「貴史の前立腺が覚えてくれるまで毎日、仕事終わりはコレを入れような?」
「えっ……」
俺が取り出したのはアナルプラグだ。貴史も調べていたから解るだろうが、感覚を覚えさせる為にアナルプラグを入れておくのは有効な手段である。
貴史の前立腺は物覚えが良いから、直ぐにドライ出来る様になるだろう。
流石に仕事中まで入れておく様な事はさせないが、仕事終わりなら構わないだろう。
車も俺が運転してやれば良い。
そう思って貴史の腰に手を回した。
「嫌です!!!」
思いっきり突き飛ばされた。
まさかそこまで抵抗されるとは思わなかった。受け身は取ったが、キョトンとしてしまう俺。
「ご、ごめんなさい!!」
貴史は謝ると、俺に手を差し出すでも無く逃げる様に部屋を飛び出して行く。
「あ、貴史!!」
慌てて起き上がって追いかけたが、貴史の足に追い付ける訳も無かった。アイツ、大会に優勝しちゃうぐらい足が早いのだ。
それにしても、『ごめんなさい』とはどういう意味だろう。
俺を突き飛ばした事への謝罪なら良いが、もう付き合いきれないのごめんなさいの可能性もある。
貴史が嫌がる事はしたくないし、少し急ぎ過ぎてしまっただろうか。
俺に処女アナル捧げるのも嫌になってしまっただろうか。
急に心細くなる。
と、兎に角。貴史を追いかけなければ。
GPSで居場所を確認しつつ、タクシーを拾った。
着いたのは割と確りしたマンションであった。
ここで貴史は誰と会っているんだろう。
部屋に上げてもらう関係。
女性が出来たとは聞いてないが…… 貴史が付き合うのは大抵お見合いだし。俺が知らない訳がない。と、なると男か?
それとも『女性は演技してるんじゃないか』なんて意地悪な事を言ったから、そっちも練習もしようなんて思ったわけでは無いよな? 真面目な貴史の事だ。やりかねない。
兎に角、貴史が居る部屋を突き止め、呼び鈴を鳴らした。
女が出て来ても男が出て来ても貴史は俺の秘書だから渡さないぞ!
「おいテメェ!!」
部屋の扉が開いたと同時に声を荒げる。だが『貴史とは、どういう関係だぁ?』と言う質問は続かかなかった。
「橋田くん?」
知ってる人だった。
「幸久さん、どうぞ入ってください」
言い方が素っ気ない。凄い怒っている。
「お邪魔します」
部屋に入ると貴史が座っていた。
「ココアです」
橋田くんはココアをテーブルに置く。
「あ、有難う」
一口頂いた。
「橋田くんと約束が有ったんだな。それならそうと言ってくれたら良かったのにな」
貴史を怖がらせない様に優しく言う。
「はい、すみません。裕太と話したい事が有ったので」
俺を突き飛ばしてまで?
「何を話したんだ?」
橋田くんに嫉妬してしまいそうになりつつも、笑顔は崩さず話を聞く。
「社長のセフレ同士ですし、私達もセフレですよね? だからする時は3人でしたいと言われたんですけど」
貴史の代わりに橋田くんが答える。
「貴史、練習も抱くのも俺だけだって約束したよな?」
「幸久さんも僕との約束破ってますけどね」
責めるような俺の口調に橋田くんが横槍を入れる。
「でも…… 私の拡張をしたりしている間は社長のお尻が寂しいと思いまして、裕太のおちんぽでズボズボされたら社長も楽しいかなと思ったんです? 私も見ていて楽しいですし…… 裕太も社長のアナル好きって言ってましたし、3人でしたほうが社長も楽しいでしょ?」
貴史はもう卑猥な言葉をマスターしたらしい。そんな所まで出来が良いのか。凄い。考えたかたも合理的である。だが、貴史、俺がズボズボ突かれるの楽しんで見てたのか。意外だ。
貴史の話を聞いている橋田くんは無言で此方を睨んでいた。
「いや、でも昨日だってそうした様に、貴史のアナルを拡張している間、貴史の陰茎は俺のアナルにインさせてあげたいし、貴史だっておちんぽ気持ちよかっただろ?」
「気持ちよかったですが、気持ち良すぎて怖くなってしまいますし、私のおちんぽでは社長を気持ちよくさせてあげられません。だから裕太にお願いしたくて、裕太が居ると私も安心します」
「なんで……」
俺と二人では安心できないと言う事か。なんでだ。俺と貴史は幼馴染で昔から一緒で、貴史は俺の秘書なのに、ほんの数日前に会ったばかりの橋田くんの方が安心すると言うのか!
大体、何なのださっきから!
俺は社長で、橋田くんは裕太、なんで俺の方がずっと貴史と一緒に居て、貴史の事知ってるのに、なんでなんだよ!
「社長!?」
「帰るぞ!」
もう我慢の限界だ。貴史を連れ帰ろう腕を掴む。
「落ち着いてください幸久さん。話し合いましょう」
橋田くんが間に割って入る。
「子会社の一社員が俺に意見する気か!」
つい、橋田くんを睨み、声を荒げてしまった。
「社長、どうしてそんな事を言うんです! パワハラですよ! 裕太、ごめんなさい。何か私、変な事をしてしまいましたか?」
貴史は良かれと思ってした行動であり、何も悪くない。それなのに自分が何か間違え、俺を怒らせていると思っている様だ。
だが、その質問を俺ではなく橋田くんにするのが腹が立つ。
火に油を注がれた気分だ。
「貴史さんは間違ってませんよ。悪いのは幸久さんです。何故ちゃんと気持ちを伝えずこんな暴挙に出るのですか! 貴史さんを怖がらせて。そんな人に貴史さんを渡せません!」
橋田くんは貴史の腕を掴む。
奪い合いの様な形になってしまった。
「僕、幸久さんも貴史さんも好きです。幸久さんと貴史さんのカプも好きです。二人共幸せになって欲しい! けど、それが無理ならば僕が幸せにしたい! それほど好きです!! 貴史さんか幸久さんを選ばなければならないとなると悩むけど、今の幸久さんは好きになれないので、貴史さんを選びます!」
橋田くんは早口で捲し立てる。
毎回思うのだが、橋田くんが言っている事はよく解らない事が結構ある。
今も良く解らないが、貴史が好きで、俺から奪い取ると言っているのは間違いないだろう。
そんな事させるか!
「貴史は俺のなんだ! 幼馴染だし、俺の秘書だ! 橋田くんが入る隙間なんて無いんだよ!」
「そんなの解らないでしょ! ちゃんと貴史さんの気持ちを確かめなきゃ! ね? 貴史さんは俺と幸久さん、どっちを愛しますか??」
声を荒げる俺に、負けじと声を荒げる橋田くん。二人で貴史を見つめる。
貴史はポカーンとしてしまっていた。
意味が解って無さそうだ。
「貴史、俺はお前を愛してるから抱きたいし、他の男となんてさせたくない。出来れば女とも付き合わないで欲しい。俺だけを見ていて欲しいんだ!」
「はい?」
俺は意を決して気持ちを伝えた。貴史はまだポカーンとしている。
でもこれ以上なんて言えば良いのか解らない。
「お前を愛しているんだ」
そうもう一度伝える。
「私を? 社長がですか?」
「そうだ」
「何かの勘違いでは??」
「そんな訳あるか!」
全然信じてくれない! 泣きたくなってきた。
「俺も自分で気付いていなかったんだ。いや、怖くて気付きたく無かったんだな。橋田くんに言われて気づいたんだよ。貴史が好きだって、こんなに独占欲を持って見るのも抱きたいと思うのも貴史だけなんだ。どうか疑わずに信じて欲しい。俺は貴史を愛してる」
そう、優しく手を握って、目を見つめる。どうしても解って欲しかった。
それにしても、この気持ちを気付かせてくれた橋田くんと恋仇になってしまうとは、皮肉なものである。
「私、セフレじゃないんですか?」
困惑してしまった様子の貴史。
「ごめんな。気持ちを伝えて関係が壊れてしまうのが怖かったんだ。君に捨てられてしまうのも怖かった。だから君の言葉に甘えてしまったんだよ。セフレじゃない。ただ俺は君だけを抱きたい。愛しているからだ」
「そんな…… 急に言われても私……」
貴史は困った様に視線を彷徨わせ、橋田くんを見つめた。
橋田くんに助けを求める目だ。
「君は橋田くんが好きだと言うのか?」
声が低くなる。
「違います。私は、裕太の事、友達になれたと思ってました。でも私は社長のセフレじゃないんですよね? 3人で出来ないんですか? 私は裕太と友達になれないんですか?」
「何でそうなんだ??」
「じゃあ3人で出来ますか?」
「うーん」
貴史が言いたい事が解らず、俺も思わず助けを求める様に橋田くんを見てしまった。
橋田くんは苦笑していた。
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