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第10話

「今度の休み、職場のみんなでお花見をするんですが、たまには犬飼さんもどうですか? よかったらクロちゃんも一緒に」  コーヒーを入れていた犬飼が、事務員の桜井さんから誘われたのは、昼休みのことだ。家でクロが留守番しているため、普段は飲み会などの誘いにはめったに乗ることのない犬飼の事情を知っての誘いだ。それぞれが食べ物や飲み物を持ち寄り、時間も大まかに決まっているだけで、遅刻や途中退場も自由だという。せっかくだからと誘いに乗ったあと、そういえばあいつはどうなのだろうと気になった。 「瀬戸さん? 一応声をかけてみましたが、瀬戸さんですからねえ……。興味ないとばっさりひとこと」  苦笑混じりの桜井さんの言葉に、犬飼もつられたように苦笑した。瀬戸の性格だったら職場の集まりに、しかもわざわざ休日を潰して参加するとは思えない。仕事以外の場で集まるのは環境が変わって、何かいいきっかけになるのではと一瞬思ったものの、相手はあの瀬戸だ。  犬飼の表情に何を思ったのか、桜井さんは同情するような表情を浮かべたあと、犬飼さんも大変ですねえ、と苦笑した。 「当日はうちの娘も参加させてもらいます。クロちゃんに会えるの楽しみにしていますね」  ありがとうと礼を言う犬飼に、桜井さんは自分の席に戻って行った。

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