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第22話

 自分のほうから誘ったくせに、瀬戸が自分の誘いを受けたことがにわかには信じがたくて、なんだか調子が狂ってしまう。 「ほら、あれだぞ。言っておくが、残業代は出ないからな」 「……ひとのことを何だと思ってるんですか」  思わず重ねて確かめてしまう犬飼に、瀬戸は呆れるような眼差しを向けた。  犬飼は、はははと空笑いした。 「それじゃあ向井にも声をかけてみるな」  犬飼がそう言ったとたん、瀬戸の顔に理解の色が浮かんだ。 「……ああ、そういうことですか」  瀬戸の瞳にわずかに失望の色が浮かんだように感じられたのは、犬飼の気のせいだろうか。 「あ、あの、瀬戸……?」 「いいですよ。今夜ですね」  瀬戸はそれだけを言うと、それ以上犬飼に言葉を挟ませる余裕を与えずに、自分の席へと戻って行った。  午後七時過ぎ、一箇所どうしても寄りたい場所があるという向井は、直接犬飼のマンションで合流することになった。向井はリビングにいる瀬戸を見るなり、「なんでそいつがいるんですか!」と叫んだ。 「よお、おつかれ。悪いけどメシはもうすぐできるから、先に入って飲んでてくれ」  三和土に立ち尽くす向井に声をかけると、犬飼は再び料理に戻った。ちょうど実家から野菜などが送られてきたばかりで、季節外れだが鍋にした。あとは簡単にサラダや酒の肴がいくつかあれば十分だろう。  さすがの向井も、そのまま帰るとは言わなかった。 「……お邪魔します」  ぼそっと呟いたあと、「これ、差し入れです」と、ビールが入ったコンビニの袋を犬飼に差し出した。 「ああ、悪いな」

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